knjrの日記

登山、鉄道、写真、カメラ、旅行、読書記録などの思いつくままに

父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。

 訳者のあとがきにあるように、著者が本書で言いたいことは↓にまとまる

  • 誰もが経済についてしっかりと意見を言えることが真の民主主義の前提
    =専門家に経済をゆだねることは、自分にとって大切な判断を他人にまかせてしまうこと
  • 大切な判断を他人任せにしないためには、経済とは何か、資本主義がどのように生まれたが、どんな歴史を経ていまの経済の枠組みが存在するようになったのかを、自分の頭で理解する必要がある

以下はポイントのメモ書き

  •  硬貨は取引に使うために生まれたのではないメソポタミアでは、農民がどれだけ支払いを受けられるかと記録するために、仮想の硬貨の量を記録していた。当時の農民は硬貨を持ち運ぶことなどなく、持ち歩いていたのは記録された借用証書だった。
  • 帝国主義超大国ユーラシア大陸に集中していた理由は?アフリカやオーストラリアで、そんな国が生まれなかった理由は?
    すべては「余剰」から始まったユーラシア大陸の土地と気候が農耕と余剰を生み出し、余剰が文字が生まれ債務と通貨、国家が生まれた。国家の支配者は軍隊を持ち、武器を装備できるようになった。
  • 封建時代の流れ:生産(農奴が作物を作る)→分配(領主が年貢を納めさせる)→債権・債務(領主が余った作物を売って、カネを稼ぎ、そのカネで買ったり支払いをしたり、カネを貸した)
    →土地と労働が商品になると、生産後に余剰を分配するのではなく、生産前に分配が始まるという「大転換」が起きた。これより借金が生産プロセスに欠かせない潤滑油になった。
    →封建時代には貴族だけが富と権力を得られたが、この時代になると借金を覚悟と能力があれば、誰でも起業家になれた。起業家になったとたん、生き残りをかけて、必死に争い始めた。最も安い賃金で労働者を雇い、最も生産性を上げた者が競争に勝つ。こうして蒸気機関が使われたり、膨大な数の労働者が過酷な条件で働かされた
    つまり産業革命の原動力は石炭ではなく、借金であった
  • 経済が破壊的な循環になったら、助けになるのは国家。国家が所有する「中央銀行」から膨大なカネを供出する。では中央銀行はどこからカネを持ってくる?答えは「どこからともなく、パット出す」。普通の銀行が「信用創造」の仕組みでおカネを貸すのと同じ仕組み。「どこからともなく、おカネを生み出す」ということにおかしいと思っているはず?でも、これはメソポタミアの農民の借用証書と、基本的には同じもの。
    国家が身の程をわきまえずに収入以上に支出をすると大惨事が起きるという人がいが、そんなことわたわごと。魚が水がなくては生きられないように、市場社会においては銀行は公的債務がなければ生きていけない=公的債務がなければ市場社会は回らない
  • マネーサプライを調整することによって、バブルと債務と経済成長の行きすぎを防ぎ、同時に景気後退を退治できる。ただしマネーサプライへの介入はあらゆる層に影響するが、その影響が公平になることはない。
    仮想通貨が最近もてはやされているが、その最大の問題点は、危機がおきたときにマネー流通量を調整できないこと。
  • 現在は「すべてを民主化しろ」「すべてを商品化しろ」という2つの主張が対立する時代になっている。権力者は「すべてを商品化」を主張し、労働力と土地、機械、環境の商品化を加速することしなないと広めている。でもそれは失敗する。
    民主化の投票は1人1票だが、商品化の投票は持つ富により票が決まる=お金持ちであればあるほと、その票が重みを持つ(会社の株と同じ)。お金持ちの選択は、地球やすべての人類のためではなく、自らの利益になるかどうか。
  • 支配者たちが余剰を手に入れ、庶民に反乱を起こさせずに、権力を維持する方法とは「支配者だけが国を支配する権利を持っていると、庶民に固く信じさせればよい」。過去はその役割を宗教が担っていたが、今は物理学者やエンジニアを真似て数学的な方法や理論、公式を駆使した経済学者がそれを担っている。庶民が「経済学は複雑すぎる。専門家にまかせておいたほうがよい」と思わせている。
    経済についての決定は、世の中の些細な事から重大な事まで、すべてに影響する。経済を学者にまかせるのは、最悪のやり方である。
    経済学者と物理学者あ同じ意味での科学者ではない
    。物理学では予想が正しかったかどうかを自然界が公平に判断してくれるが、経済界はそういった公平な判断の対象にならない。科学実験と違って、実験室で経済状況を完全にコントロールしても正当性を証明することはできない。