台湾・阿里山 野鳥観察記
1. はじめに
台湾には、世界でここだけにしか生息しない固有種の野鳥が数多く存在する。その中でも私の好きなヒタキ科の鳥である「アリサンヒタキ」が今回の一番のターゲット。台湾の中でもヒタキ科が多い標高が高い有名な探鳥地には大雪山と阿里山がある。ネットで事前に調べたところ阿里山のほうが公共交通機関でアクセスしやすいことがわかったので、今回は阿里山を選択。
阿里山は標高2,200〜2,400mに広がる山岳エリアで、台湾の野鳥観察における聖地ともいえる場所だ。シーズンとしては梅雨真っ只中の6月。「雨が多い」とわかっていながらも、何とかなるだろうと思い行ってきました。
2. アクセス
成田→桃園→高鉄嘉義→阿里山
日本からのアクセスは以下のルートが基本だ。
① 飛行機:成田(または羽田)→ 桃園国際空港
LCCを利用すれば深夜便で早朝到着が可能。到着後すぐに移動を開始できるのが利点だ。深夜便で早朝に着いた場合は始発まで空港で待つことになる。空港ホテルもあるが、待ち時間が3〜4時間程度なら、出発ターミナル側のレストラン街の椅子で仮眠することも可能。到着ターミナルの地下にはセブンイレブンもある。
② 空港MRT:桃園空港 → 桃園駅(時刻表)
普通車(青ライン)で約19分、料金25元。空港で悠遊カード(SUICAのようなもの)を購入すればそれで乗車できる。始発は第1ターミナル発で6:07頃(普通車)。
③ 高鉄(台湾新幹線):高鉄桃園 → 高鉄嘉義(公式サイト)
所要約1時間20分。事前にオンライン予約が可能で、Redeem Codeで窓口発券できる。高鉄桃園駅の南行き始発は6:49頃。これに乗れば高鉄嘉義(在来線の嘉義駅とは離れているので注意)に8時過ぎに到着できる。
④ 台湾好行7329バス:高鉄嘉義 → 阿里山(台湾好行公式)
高鉄嘉義駅から乗車。所要約2時間30分。始発は8:40(その後9:30、10:10、11:00、13:10と続く)。事前予約は不可で当日並ぶ方式だが、6月平日は問題なく乗れた。運賃はNT$263。

注意点: KKdayのチケットには有効期限がある。私は「3日間有効」を「4営業日」と勘違いしてしまい、帰路で期限切れとなって使えず、現金払いになった。利用日数のカウントには十分注意したい。
入場料について
阿里山国家森林遊楽区の入場料は、阿里山の入場ゲートで支払う。KKdayでバスチケットと入場券をセットで事前購入することもできる。

3. 宿泊
阿里山の中心地、中正村エリアに宿を取った。バスターミナル・食堂・売店が徒歩圏内にあり、早朝の探鳥拠点として非常に便利な立地だ。
チェックインは15:00以降なので、それ以前に到着する場合は、宿に不要な荷物を預けてから行動開始するとよい。
宿の予約はBooking.comなどで簡単にできる。エリア内にはいくつも宿があるので、立地と予算で選べばよい。
4. 天気と探鳥時間
6月・梅雨シーズンの実態
6月の阿里山は毎日雨が降る。現地で天気予報を見ていたが、2週間先までずっと雨予報だった。最終日に晴れたのは本当にたまたまである。しかし重要なのは「いつ降るか」だ。
| 日付 | 天気の流れ |
|---|---|
| Day1 | 到着直後から小雨、15時頃から本降り |
| Day2 | 早朝〜11:45は曇り・霧で探鳥可能、11:45から本降り |
| Day3 | 早朝〜9:00は探鳥可能、9:00から大雨、午後は降ったり止んだりの繰り返し |
| Day4(最終日) | 梅雨の晴れ間。朝日も見られ、10時過ぎまで晴れ(たまたまの幸運) |
パターンは概ね、午前中が勝負、午後は雨。この傾向を把握しておけば、毎日探鳥時間を確保できる。早朝4時頃に出発して10〜11時に撤収するサイクルを繰り返した。
天気予報アプリ
現地ではウェザーニュースを使っていた。ただし日本のように1時間ごとの予報精度は高くなく、あくまで参考程度。阿里山のページはこちら:
https://weathernews.jp/onebox/tenki/world/1/taiwan/alishan-forest-railway/
日の出と撮影可能時刻
6月の阿里山の日の出は5:20〜5:25頃。しかし撮影に必要な明るさが得られるのは日の出後15〜30分が目安だ。曇り・霧の日はさらに遅れる。
また、祝山駅から下るルートは山の影に入るため、日が当たるまでにさらに時間がかかる。暗い時間帯は撮影より「声での探鳥」に集中し、明るくなってから撮影モードに切り替えるのがよい。
5. 探鳥エリア別レポート
ビジターセンターにある地図(紙配布は無し)は以下のとおり。職員の方に聞きましたが、野鳥専用の情報は無かったです。

日本語の地図↑はこちらからダウンロード可能です。

① 沼平公園・祝山線沿い
沼平駅から沼平公園にかけての遊歩道は、林縁部が続き鳥の出が良いエリア。早朝の光が差し込む時間帯に特に活発になる。
② 祝山(祝山線で早朝アクセス)
阿里山随一の日の出スポット、祝山。展望台では毎朝大勢の観光客が日の出を鑑賞するが、探鳥目的なら小笠原山展望台に向かわず、祝山駅から下るルートを選ぶのがおすすめだ。観光客とは逆方向になるため人が少なく、静かな環境で探鳥できる。高標高エリア特有の鳥が多く生息しており、早朝の探鳥効率が非常に高い。
早朝の人出が一段落した後に再訪するのもよい。人が少なくなり、落ち着いて探鳥できる。
③ 祝山観日歩道
沼平駅から祝山に向かう遊歩道。高標高ならではの鳥が期待できる。標高差が150mほどあるが、非常に歩きやすい階段遊歩道が整備されている。
④ 塔山歩道
大塔山方面へ向かう歩道。深い森が広がり、固有種との出会いが期待できるエリア。森林鉄道沿いではあるが、線路脇の平坦な道ではなく、20-30m程度のアップダウンを繰り返す道なので注意。コースの終点の塔山までは、標高差200mほど登ることになる。なおこのコースは鉄道やバスでのアクセスはできない。
⑤ 神木周辺
阿里山を代表する巨木「神木」周辺は、深い原生林が広がる探鳥の好ポイントだ。神木駅はホームの裏に長いベンチと屋根があり、雨宿りしながら目の前の森を観察できる。雨の日の待機場所としても最適だ。
⑥ ホテル周辺
中正村の宿周辺でも、早朝や夕方に鳥が出る。なぜかセブンイレブン前の樹木にも多い。移動の合間にチェックする価値あり。
6. 園内の移動
阿里山森林鉄道(3路線)
園内には3つの鉄道路線がある(支線時刻表・公式サイト)。嘉義からの本線は1日1〜2本で予約が必要だが、山上のこの3支線は基本的に自由席で簡単に乗車できる(祝山線のみ1日1本なので前日予約を推奨)。短時間ですが、箱根登山鉄道のような急勾配と急カーブを満喫できる。
祝山線:朝の1便のみ運行。要予約。今回は2編成の運行だったが、ピーク時には最大5編成になるという。料金150元。翌朝の出発時刻は日の出時刻に合わせて、前日夕方に発表される(今回は4:10発)。座席確保には30分以上前に並ぶのが安全。

沼平線・神木線:約1時間おきに運行。料金100元。疲れているときや雨のときに有効活用するとよい。神木線のほうが距離が長く標高差もある。

バス
今回は使わなかったが、園内はバスも頻繁に動いている。祝山へは早朝以外はバスが便利。
7. 出会えた野鳥たち

今回の滞在で確認できた種は以下の通り(写真撮影できたものには📷、目視だけは👀)。
| 英語名(English Name) | 日本語名 | 写真、目視 |
| Taiwan Vivid Niltava | チャバラオオルリ | 📷 |
| Collared Bush-Robin | アリサンヒタキ | 📷 |
| White-eared Sibia | ミミジロチメドリ | 📷 |
| Taiwan Yuhina | カンムリチメドリ | 📷 |
| Flamecrest | ニイタカキクイタダキ | |
| Taiwan Liocichla | ヤブドリ | 📷 |
| Snowy-browed Flycatcher | ムネアカヒタキ | 📷 |
| Taiwan Cupwing | タイワンサザイチメドリ | |
| White-tailed Robin | コンヒタキ | 📷 |
| Taiwan Bush-Robin | タイワンキクチヒタキ | |
| Rufous-faced Warbler | コシジロムシクイ | |
| White-whiskered Laughingthrush | タイワンキンバネガビチョウ | 📷 |
| Morrison's Fulvetta | メジロチメドリ | 📷 |
| Taiwan Shortwing | タイワンコバネヒタキ | |
| Yellowish-bellied Bush Warbler | ミヤマウグイス | |
| Taiwan Rosefinch | タカサゴマシコ | 📷 |
| Taiwan Whistling-Thrush | ルリチョウ | 📷 |
| Plumbeous Water Redstart | カワビタキ | 📷 |
| Green-backed Tit | キバラシジュウカラ | 📷 |
| Taiwan Barwing | シマドリ | 👀 |
| Taiwan Bush Warbler | タイワンオウギセッカ | |
| Black-throated Tit | ズアカエナガ | 👀 |
| Mikado Pheasant | ミカドキジ | 📷 |
| Rufous-capped Babbler | ズアカチメドリ | |
| Eurasian Jay | タイワンカケス | 📷 |
ほぼ全てが台湾固有種または固有亜種。梅雨シーズンとは思えない充実した結果だった。写真も目視もできなかった鳥は↓のMerlinアプリで声を識別したもの。
8. 観察のコツ
① 早朝4〜10時が絶対的な勝負時間
午後は雨が降ることが多い。早朝に出発し、雨が来る前に戻るサイクルが基本だ。日の出前の暗い時間帯でも、さえずりで鳥の存在を確認できる。
② 「声で見つけて、待って撮る」
6月は繁殖期でさえずりが活発。声がしたらその場で動かず2〜3分待つ。低い藪の縁や枝先をじっくり観察するとゴソゴソしていることが多い。この辺は日本国内と同じ。
③ Merlinアプリを活用する
コーネル大学が開発した無料アプリ「Merlin Bird ID」は、声を録音するだけで鳥の種類を特定してくれる。日本国内では認識率が6割程度だが、阿里山では85%ほどの認識率で、ほぼ鳴き声だけで鳥が判別できた。声しか聞こえなかった鳥も、Merlinで記録しておけばeBirdと連携して観察記録として残せる。今回の探鳥で大活躍したアプリだ(7で記載した鳥もこのアプリで種類を判別)。
④ 探鳥スタイル
ここにはハイド(観察用の隠れ小屋)はない。自分で歩いて探すしかない(森林鉄道やバスを使うと効率よく移動できます)。歩く道は遊歩道が基本で、スリップ防止の溝が入った木道が非常によく整備されている。林道(舗装路)も歩くが、一般車の乗り入れが制限されているため静かに歩ける。日本的な急峻な登山道ではない。
エリア内の標高差は200mちょっと(宿のある中正村が約2,200m、祝山周辺が約2,400m)。普段登山をしない人でも歩ける。1日5〜10km程度歩けるレベルがあるとよい。
9. 実用情報
交通・費用
| 区間 | 交通手段 | 費用目安 |
|---|---|---|
| 桃園空港→高鉄桃園駅 | 空港MRT | NT$25 |
| 桃園→嘉義 | 高鉄 | NT$700前後 |
| 嘉義→阿里山 | 台湾好行7329バス | NT$263 |
| 祝山線 | 森林鉄道 | NT$150 |
| 沼平線・神木線 | 森林鉄道 | NT$100 |
キャッシュレス事情
阿里山エリアは現金が基本。タクシー・食堂・売店はほぼ現金のみ。一方、台北(コンビニ・書店・高鉄)ではクレジットカードやPayPayが使える。2026年4月からPayPayが台湾の大手コンビニ4社で利用可能になっており、セブンイレブンでは大変便利だった。推奨両替額:NT$12,000(約49,000円)。
携帯・通信
携帯キャリアは中華電信が山岳エリアで一番強いとされる。今回は阿里山全域で5Gが利用可能で、遊歩道を歩いている最中でもエリア外になることはなかった(驚き)。eSIMを使う場合も中華電信回線のものを選ぶと安心。私は事前に日本で5日間で使い放題1000円ほどのeSIMを購入しておき利用。
↓は中華電信のサービスエリアマップ。
食事
ホテルの朝食もついていたが、朝食時刻と探鳥のピーク時刻が重なるので、基本は朝食・昼食とも阿里山駅近くのセブンイレブン(台湾で一番標高の高いセブンイレブン)で調達した。阿里山のセブンイレブンは早朝から営業し、おにぎり・サンドイッチ・弁当・お酒と品揃えが充実。PayPayも使える。夕食はビジターセンター横の食堂街で食べた。1食50〜150元ほど。

服装・防寒
防寒は必要だが、梅雨の季節はそれほど厳重でなくてよい。早朝でも長袖シャツとゴアテックスの雨具だけで問題なし。日中は半袖の人も多い。
雨対策(重要)
雨は強いことも多いので、雨具は上だけでなく下(レインパンツ)も必携。靴はハイカット登山靴で防水必須(事前に防水・撥水スプレーでメンテナンスを)。
そしてザックカバーは絶対にあったほうがよい。筆者は簡易防水ザックだったが、ザックカバーを忘れて初日にザックの中身を濡らして大変な目に遭った(傘はさしていたのに……)。
雨除け施設
鉄道の駅舎が雨宿りに便利。ところどころに東屋もある。

撮影機材
早朝はもちろん、梅雨の森林の中では日中も曇りで光量が少ない。明るいレンズは必須。F8だと厳しいのではないか。今回は特に藪の中でいる鳥も多かったので、高ISOで撮ってあとからノイズ処理する方針も有効で、筆者は普段使わないISO12800も今回は使用した。
10. おわりに
「6月の阿里山は雨が多くて難しい」と言われる。実際その通りだった。しかし、毎朝の探鳥時間は確保できたし、出会えた鳥の数と質はこの季節にしては上出来だった。
次回は10月下旬〜11月上旬、渡り鳥と留鳥が重なるベストシーズンに再訪したいと思っている。
