knjrの日記

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山岳遭難通信用デバイス(携帯エリア外)その1:概要

山岳遭難の対策を調べている中で、GPSで有名なGarmin社がIridium衛星を使ったサービス&デバイスを提供していることを知りました。調べてみるとGarmin社以外にも衛星ネットワークを使って通信(SOS遭難信号を送る、位置情報を送る)するサービスやデバイスがあることがわかりましたので、まとめておきます

Garmin

InReach 衛星通信
Garmin の inReach 衛星通信技術と衛星通信のサブスクリプションによって、世界のどこにいても連絡を取り合うことが可能となります。
メッセージの送受信やルートのナビゲート、位置情報の共有、必要があればSOS を押して、Iridium衛星ネットワークを経由し、24 時間年中無休のグローバル緊急対応センターGEOSからサポートを受けることが可能です。

このInReach通信に対応する機器としては、現行の最新機種としては以下の2種類の系統があります。


Garmin inReach Mini 2
定価52,800円、Amazonでも約4.6万円。GPSでのトラックバック機能はありますが、地図が表示されていないので、山行中のGPSバイスの代わりに使うのは困難です。

 

○GPSMAP 67i
こちらは定価99800円、Amazonでも9万円ほど。地図搭載の既存のモデルにInReach通信を付けたもののようです。一つ古いモデルである GPSMAP 66iは3万円ほど安いですが、機能やバッテリー容量が異なります。

 

いずれの製品も、SOS送信、メッセージを直接入力・送信する機能と共に、Bruetoothでスマホと接続し、スマホから入力する機能もあります。

またIridium衛星ネットワークを用するためにはサブスクリプション契約も必要です。契約は以下表の3種類で、いずれも月単位もしくは年単位での契約ができようです。どのプランを選ぶのかは、ポイントの追跡/送信や位置情報のリクエストの回数次第になります。


Garmin inReach Mini2 については、海外・国内でも利用者は多いようで、紹介記事、ブログ、Youtube動画なども、かなり上がっています。そちらを参考にされるとよいと思います(私はキャッチアップできていなかったので、いつの間にという感じです)

GPSMAP 67iについても、ヤマケイオンラインでの紹介記事がありましたので載せておきます。

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■ZOLEO

Garminと同じくIridium衛星ネットワークを利用するサービス。SOS通信やメッセージ通信などはGarminと同じです。日本向けにはサービスを行っていないようですが、米国などで契約をすれば日本国内でも使えるとの情報あり。端末は$200~と安めなのですが、サブスクリプション料金はGarminより高い(US$20/月~)。日本国内で利用する際に、わざわざZOLEOを選択するメリットは殆どないのではないかと思います。
以下はUS向けの公式サイトになります(国により料金等の内容が異なるため)。日本向けのページはありません。

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■Globalstar(SPOT)

米国のグローバルスター社の衛星ネットワーク利用してメッセージを送る機能があります。

Gen4という最新の製品が約27,000円ほどで販売されています。

サービスエリアは、ほぼ日本国内全土がカバーされていますが、以下が制限区域になっていて利用不可のようです

JAXA臼田宇宙空間観測所および国立天文台野辺山宇宙観測所の周囲30km内
NICT鹿島宇宙技術センターの陸側30km内、海側50km内

(GlobalStarは八ヶ岳周辺では制限されていますが、上述のGarminIridiumネットワークはは問題なく使えるようです)

上記のように日本向けにもサービス提供しています。

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■PLB (Personal Locator Beacon)

海外ではかなり普及している仕組みがこのPLBです。PLBは特定のメカーの製品ではなく、国際的な海上の安全に関する規則「世界海洋遭難安全システム:GMDSS」で認定された規格規格にそった「人工衛星を使った遭難信号発信器」となります。

GarminやGlobalStarの製品との違いが幾つかあるので注意が必要です。主なところは以下となります。

  • PLBはSOSの非常通報用信号を発信するだけの片方向通信で、GarminやGlobalStarはメッセージのやりとりもできる双方向通信
  • PLBは非常通報用信号を初回以降も電池が切れるまで数十秒間隔で継続的に発信し続けるが、GarminやGlobalStarのSOSは単発。海上遭難では、海流により刻々と位置が変わるので重要な機能と思われる
  • PLBが利用する衛星はIridiumやGlobalstarのような商業衛星ネットワークではなく、コスパス・サーサットという非商業の衛星ネットワーク(遭難人工衛星を使用した捜索救難活動を率先する政府間組織で、日本を含む世界45ヶ国が加盟)を利用している。
  • PLBは非常通報用信号(405MHz、5W)とは別に、近隣まで来る救助隊の捜索用のための保方位探知用の121.5MHzの電波も発信します(ホーミング機能という。ココヘリと同じような仕組み)。これはGarminやGlobalStarの製品にはありません。
  • PLBはリチウム電池の使用で通常時は5年、非常用通報を発射してから24時間程度電波を発射可能だが、充電ができない。GarminやGlobalStarの製品はモバイルバッテリーがあれば、遭難中でも充電が可能。

↓はplbjapanが公開しているPLBによる救助の流れ

↓は海上保安庁が公開している、コスパス・サーサットシステム 概要説明の図

コスパス・サーサットについて調べてみると各国が協力し国際的にも既に確立されている仕組みなので、このPLBも日本国内の山岳遭難でも使えるのかとおもいきや・・・

免許が必要という点に加えて、何と日本国内では海上でしか利用できないようです。日本がコスパス・サーサットにも加盟しておきながら、縦割り行政の影響なのか何なのか、残念でなりません。

PLBを使用するにあたっての留意事項
1)海上以外での使用禁止
  PLBは、我が国では海上においてのみ使用することができます。陸上(山岳、湖沼、河川など)や上空では使用できません。

・・・(他にも留意事項あります)

 

PLBを使用するための条件
1)無線局の免許が必要
   PLBは、購入してすぐには使用できません。電波法により定められた手続を行い、総務省の遭難自動通報局の免許(免許の有効期間は5年)が必要です。無線局の定期検査や無線従事者資格は必要ありません。

・・・(他にも条件あります)

海外ではかなりの種類が販売されていますが、日本国内で利用するには技術基準適合証明等(技適マーク)を取得する必要があり、それを満たす製品は現在のところ↓の1製品だけのようです。価格は71,500円。通信のためのサブスクリプションは不要です。

 

またPLBにはGPSを内蔵していない第一世代規格の製品(2017年以前)と、それ以後の企画のGPS内蔵の製品がありますが、位置情報の特定方法が異なります。内蔵製品はGarmin等と同じく取得した位置情報を衛星ネットワークで通信しますが、第一世代の製品ではコスパス・サーサットの複数の衛星からの遭難信号を用いて、受信局側で位置を特定する仕組みです。

 

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■iPhone14

更にいろいろ調べていくと、な、な、何とiPhone14以降は衛星通信に対応しているとの情報が。

↑の情報では、ハワイでは利用できたが、日本国内では呼び出しができないとのこと

日本帰国後も「設定」の「緊急SOS」には、衛星経由の緊急SOSの項目は残っていたが、非対応地域ということで呼び出すことができなかった

利用する通信ネットワークはGlobalstar(SPOTと同じ)ですが、緊急時の対応は、他のサービスのようにIERCCではないようです

救助を派遣できる緊急サービスにルーティングされるか、地元の緊急サービスがテキストメッセージを受信できない場合は、Apple の訓練を受けた緊急専門家がいるリレーセンターにルーティングされます。

これが日本国内でも利用できれば、SOS遭難発信だけであれば(平常時の携帯エリア外の衛星通信は不要という意味です)、iphoneで十分ではないでしょうか。早く国内での利用環境の整備が進まないものでしょうか。

 

この辺り調べているとキリがないです。長くなってきたので、今回はこれくらいにしますが、次回は次のようなこをとまとめていきたいと思います。

  • 今回のSOS遭難通信デバイス情報のまとめ
  • PLBが日本国内で海上でしか利用できない理由
  • ココヘリとの関係をどう考える

また今回の情報は2024/6現在のネットででの公開情報から素人が集めたものなので、誤りも含まれると思います。見つけた方は連絡いただけますと幸いです。あわせて有益な追加情報もお待ちしてます。