knjrの日記

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「第5の戦場」 サイバー戦の脅威

元・陸上自衛隊のシステム防護体長で、現在はセキュリティベンダーのLAC社に所属する伊藤寛氏によるサイバー戦についての書。戦争に対する考え方が一変させられる。セキュリティ関係者だけでなく、幅広く読んでもらいたい一冊。

「第5の戦場」 サイバー戦の脅威(祥伝社新書266)

「第5の戦場」 サイバー戦の脅威(祥伝社新書266)

  • 戦場における戦い方は、技術の進歩によってパラダイム転換がされてきている(棍棒、弓、青銅器、鉄、銃、飛行機、偵察衛星)。パラダイム転換に伴い戦闘空間も領域が広がってきている。サイバー空間は既に、陸、海、空、宇宙に次ぐ、第五の戦場になっている。
  • 日本の憲法第九条では、自衛隊は武力攻撃がないと防衛出動ができない。自衛隊にサイバー部隊はあるが、現状ではサイバー攻撃は武力攻撃に含まれず、仮に日本の中枢システムがサイバー攻撃を受けて大混乱に陥ったとしても、今の法体系、法解釈の元では自衛隊の防衛出動はできないあり得ない。自衛隊がやることは、基本的に自分達のシステム、つまり防衛省自衛隊の指揮通信システムを守るだけである。
  • サイバー戦の時代は、誰もが自分の意志で勝手に戦争に参加できる。十分なサイバースキルがあれば、個人であっても国家に戦いを挑める時代がやってきている(実際に2008年のグルジアに対するサイバー攻撃は、愛国心に燃えたロシアのハッカー達が協力していたといわれている)
  • 犯罪と戦争は大きく異なる。犯罪は対象は国内だけであり、取り締まるのは警察、使える武器も「警察比例の原則」により制限がある。しかし戦争となれば世界中どこへでも軍事力の行使ができる(一応、人道的な観点から、戦争法規というものもあるが事実上強制力を持たない)。米国がテロを犯罪から戦争へ格上げしたのはまさにこの点、軍事力を行使できるとう点にある。
  • 攻撃の主体が個人やグループの「サイバー犯罪」についての国際的な枠組作りは始まっている(「サイバー犯罪条約」2004年7月発効)が、国やそれに準じる主体が行う「サイバー攻撃」については何のルールも存在していない無法地帯である。