knjrの日記

登山、鉄道、写真、カメラ、旅行、読書記録などの思いつくままに

「原子力安全委員会」を単独で事故検証させるな

あまりマスコミに報道されていませんが、過去に原子力村にいた16人の専門家の方々が陳謝・提言をしています。
「福島原発事故についての緊急建言」


福島原発事故についての緊急建言>

はじめに、原子力の平和利用を先頭だって進めて来た者として、今回の事故を極めて遺憾に思うと同時に国民に深く陳謝いたします。


私達は、事故の発生当初から速やかな事故の終息を願いつつ、事故の推移を固唾を呑んで見守ってきた。しかし、事態は次々と悪化し、今日に至るも事故を終息させる見通しが得られていない状況である。既に、各原子炉や使用済燃料プールの燃料の多くは、破損あるいは溶融し、燃料内の膨大な放射性物質は、圧力容器や格納容器内に拡散・分布し、その一部は環境に放出され、現在も放出され続けている。


特に懸念されることは、溶融炉心が時間とともに、圧力容器を溶かし、格納容器に移り、さらに格納容器の放射能の閉じ込め機能を破壊することや、圧力容器内で生成された大量の水素ガスの火災・爆発による格納容器の破壊などによる広範で深刻な放射能汚染の可能性を排除できないことである。


こうした深刻な事態を回避するためには、一刻も早く電源と冷却システムを回復させ、原子炉や使用済燃料プールを継続して冷却する機能を回復させることが唯一の方法である。現場は、このために必死の努力を継続しているものと承知しているが、極めて高い放射線量による過酷な環境が障害になって、復旧作業が遅れ、現場作業者の被ばく線量の増加をもたらしている。


こうした中で、度重なる水素爆発、使用済燃料プールの水位低下、相次ぐ火災、作業者の被ばく事故、極めて高い放射能レベルのもつ冷却水の大量の漏洩、放射能分析データの誤りなど、次々と様々な障害が起り、本格的な冷却システムの回復の見通しが立たない状況にある。


一方、環境に広く放出された放射能は、現時点で一般住民の健康に影響が及ぶレベルではないとは云え、既に国民生活や社会活動に大きな不安と影響を与えている。さらに、事故の終息については全く見通しがないとはいえ、住民避難に対する対策は極めて重要な課題であり、復帰も含めた放射線放射能対策の検討も急ぐ必要がある。


福島原発事故は極めて深刻な状況にある。更なる大量の放射能放出があれば避難地域にとどまらず、さらに広範な地域での生活が困難になることも予測され、一東京電力だけの事故でなく、既に国家的な事件というべき事態に直面している。


当面なすべきことは、原子炉及び使用済核燃料プール内の燃料の冷却状況を安定させ、内部に蓄積されている大量の放射能を閉じ込めることであり、また、サイト内に漏出した放射能塵や高レベルの放射能水が環境に放散することを極力抑えることである。これを達成することは極めて困難な仕事であるが、これを達成できなければ事故の終息は覚束ない。


さらに、原子炉内の核燃料、放射能の後始末は、極めて困難で、かつ極めて長期の取組みとなることから、当面の危機を乗り越えた後は、継続的な放射能の漏洩を防ぐための密閉管理が必要となる。ただし、この場合でも、原子炉内からは放射線分解によって水素ガスが出続けるので、万が一にも水素爆発を起こさない手立てが必要である。 


事態をこれ以上悪化させずに、当面の難局を乗り切り、長期的に危機を増大させないためには、原子力安全委員会原子力安全・保安院、関係省庁に加えて、日本原子力研究開発機構放射線医学総合研究所、産業界、大学等を結集し、我が国がもつ専門的英知と経験を組織的、機動的に活用しつつ、総合的かつ戦略的な取組みが必須である。


私達は、国を挙げた福島原発事故に対処する強力な体制を緊急に構築することを強く政府に求めるものである。


平成23年3月30日

青木 芳朗   元原子力安全委員
石野 栞     東京大学名誉教授
木村 逸郎   京都大学名誉教授
齋藤 伸三   元原子力委員長代理、元日本原子力学会会長
佐藤 一男  元原子力安全委員長
柴田 徳思   学術会議連携会員、基礎医学委員会 総合工学委員会合同放射線の利用に伴う課題検討分科会委員長
住田 健二   元原子力安全委員会委員長代理、元日本原子力学会会長
関本 博    東京工業大学名誉教授
田中 俊一   前原子力委員会委員長代理、元日本原子力学会会長
長瀧 重信   元放射線影響研究所理事長
永宮 正治   学術会議会員、日本物理学会会長
成合 英樹   元日本原子力学会会長、前原子力安全基盤機構理事長
広瀬 崇子   前原子力委員、学術会議会員
松浦祥次郎   元原子力安全委員長
松原 純子   元原子力安全委員会委員長代理
諸葛 宗男   東京大学公共政策大学院特任教授

過去に行っていたことに陳謝することは、自己否定に繋がり、かなり心の格闘があったと思う。過去のことを責めても仕方がない。今はかれらのような専門家の力が必要なのである。


そんな中、恐れていた記事を見つけた。4/20のNHKニュースから


原発損傷“地震の揺れでない”>
東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて、初めて現地を視察した国の原子力安全委員の一人が作業員などからの聞き取りの結果、福島第一原発は「地震の揺れによって根本的な損傷を受けたわけではない」という見方を示しました。


福島第一原発を視察したのは、国の原子力安全委員会の小山田修委員で、20日夜、福島市で記者会見し、東京電力福島第一原発の所長や現場の作業員などから聞き取った地震直後の様子や原発内の作業環境などについて話しました。この中で、小山田委員は、「現場にいた作業員の話から、原子炉の緊急停止は問題なく行われたと考えられ、地震直後には原子炉や建物に根本的な損傷はなかったと考えられる」と述べ、地震のあとの津波によって電源がすべて失われるなどの深刻な事態に陥ったという見方を示しました。ただし、それを証明できる計器の数値などは入手できない状態だということも明らかにしました。また、事故の発生から1か月以上がたって、初めて委員による福島第一原発の視察が行われたことについては、「事故発生当時の状況は刻々と変化していて、現場に入ることは考えなかった」と述べました。今回の視察の結果は、原子力安全委員会で報告されるということです。


今回の福島の震災の全て責任を「津波」に押し付けるつもりである。つまり原子力村の連中は地震」には耐えた=他の原発地震の耐性は十分であるという筋書きだろう。


4/19の日記で紹介した「原発事故はなぜくりかえすのか」の中でも、
『事故が発生した場合には国や関係機関による調査は、「被害はこの程度で済んだ」「国の安全審査はそこそこ健全な機能を果たしているのだ」ということを証明するための防衛的な調査になりがちである』
ということを紹介した。今回は、まさにその通りになる危険が大きい。


今やるべきことは、今回の事故後の検証作業に、原子力村外部の専門家を入れること。「熊取6人組」の小出裕章氏や、武田邦彦先生、冒頭で紹介した「福島原発事故についての緊急建言」をした16名のうち、本当に反省している者であれば、それでもよい。政府ができないのであれば、外部の専門家自ら圧力をかけてでもそうするべきである。