knjrの日記

登山、鉄道、写真、カメラ、旅行、読書記録などの思いつくままに

世界史の極意

<いま>を読み解くためのに必須な歴史的出来事を整理して解説している。世界史を通してアナロジー的なものも見方を訓練する本。「資本主義と帝国主義」「民族とナショナリズム」「キリスト教イスラムの3つのテーマを集中的に学習することで、現下の世界のありかたを正確にとらえる。

世界史の極意 (NHK出版新書)

世界史の極意 (NHK出版新書)

  • ビジネスパーソンにとってもっとも重要な基礎知識の一つは世界史。その理由は過去に起きた事のアナロジー(類推)によって、現在の出来事を考えるセンスが見につくから。アナロジー的な思考が身につくと「この状況は、過去に経験したあの状況とそっくりだ」と対象を冷静に分析できる。
  • アナロジー的な思考の訓練は、知識人の焦眉の課題である「戦争を阻止すること」に不可欠の思考である。第一次大戦から100年、二つの悲惨な戦争を経て、人類は世界戦争に懲りたはず、核兵器を使えば、互いに自滅が避けられないから、戦争を抑止されるのではなかったか?だが人類は核兵器を使わない範囲で戦争する「知恵」をつけてきている。「歴史は繰り返す」とよく言われるが、歴史が反復しているかどうかを洞察するためには、アナロジカルに歴史を見ることが不可欠。
  • 自由主義の背後にはつねに覇権国家の存在があり、覇権国家が弱体化すると、帝国主義の時代が訪れる。過去にイギリスが覇権国家から弱体化する後、ドイツやアメリカが台頭し、帝国主義の時代が訪れた。2回の大戦後はアメリカが覇権国家として君臨したが、同時多発テロリーマンショックアメリカが弱体化が明らかになると、ロシアや中国が軍事力を背景に露骨に国益を主張するにようなる。その結果、かつての帝国主義を反復する「新・帝国主義が訪れている。ただしこの「新・帝国主義」はかつての帝国主義と違い、「植民地を求めず、全面戦争を避ける傾向を持つ。その理由は植民地を持つコストが高いこと、全面戦争により共倒れになることを恐れているから。ただし、「新・帝国主義」になっても、外部からの搾取と収奪により生き残りを図るという帝国主義の本質や行動様式に変わりはない。帝国主義は、国際協調から再び牙を向く方向へ路線を変更する危険性が常にあること。相手が弱体化し、国際世論の潮目が代わって自国の権益を拡張する機会を常にうかがっている。
  • 資本主義が発達してグローバル化が進んで末に、帝国主義の時代が訪れる。同時に帝国主義の時代には、国内で大きな格差が生まれ、多くの人びとの精神が空洞化する。その空洞を埋め合わせる最強の思想がナショナリズム新・帝国主義が進行する現在、ナショナリズムは再び息を吹き返しており、近現代人の宗教になっている。宗教である以上、誰もがナショナリズムを自らのうちに抱えている。その新暴走を阻止するために、私たちは歴史には複数の見方があることを学ばなければならない。一つの事実に複数の見方があることを理解するようになると思考の幅が広がり、自分と異なるものの見方や考え方をする人がいてもそこことに感情的に反発する事が少なくなる。「他人の気持ちになって考える」ことがナショナリズムの時代には決定的に重要になる。