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2010年6月 福島第一原発二号機の電源喪失事故の原因は何と...

昨年の南アフリカで開催されていたサッカーワールドカップの最中、福島第一原発二号機で電力喪失事故が発生し、あわやメルトダウンかという、今回の事故の予兆のような事象があったということは知らない人が多いだろう。自分も今回の震災後の情報収集の中で知った。
1年も経過した今、その電力喪失の原因について6月15日の「ウォール・ストリート・ジャーナルの日本語版」の記事の中で明らかにされたようだ。


ざくっと言うと、な、な、何と、「下請け会社の保守要員の一人の肘が、誤って制御盤にぶつかってしまった」という極々、日常的な動作により引き起こされていたようです。再発防止の対策の内容も驚きだ「制御盤近くに作業員の注意を喚起する表示を掲示した」おいおい、それだけなのか?「再発防止より、費用を抑えたい」という電力会社の体質をそのまま表現している。またその再発防止案受け入れる原子力保安院もどうかしている。


以下、WSJの引用記事。



【東京】3月11日の地震津波福島第1原子力発電所が停電に見舞われる9カ月前、同原発の原子炉の1つで、もっと日常的な状況下においても電力が失われる事態が発生していた。下請け会社の保守要員の一人の肘が、誤って制御盤にぶつかってしまったことが原因だった。


 東京電力によると、その停電によって、原子炉内の核燃料棒を冷やす冷却水の水位は一時的に急低下した。


 結果的に原子炉の破損や放射性物質の放出には至らなかったため、この事故はほとんど見過ごされていた。だがこの出来事は、老朽化しつつある設備のぜい弱性を一部浮き彫りにするとともに、東電が採用している現行の予防手順や時代遅れの機器に疑問を投げかけるものだ。


 東電の調査によると、2010年6月17日午後2時42分、福島第1原発2号機の中央制御室で原子炉の自動緊急停止を警告するアラームが鳴った。数分後、核分裂を阻止するための制御棒が原子炉に挿入された。だが外部電源が遮断されていたため、給水ポンプによる炉心への注水がストップし、原子炉内の温度と圧力が上昇した。


 東電は、差し迫ったメルトダウン炉心溶融)の可能性はなかったとし、水位も停電後すぐに通常レベルに回復したとしている。東電役員は、非常用のディーゼル発電機が自動起動するよう設定されていた上、原子炉内の冷却水の水位が20センチ以上下がった場合には緊急炉心冷却装置(ECCS)が作動し、燃料棒が露出する危険を防ぐ仕組みになっていると説明している。


 だが、中央制御室の作業員が瞬時に判断し、ディーゼル発電機とECCSを手動で起動していなければ、もっと深刻な結果を招いていた可能性があると指摘する声もある。そうした人たちは、この事故によって停電時の原発のぜい弱性が露呈したとしている。


 「笑いたいほどだが、笑い事じゃない。単純なミスであわやメルトダウンという深刻な事態になることが、安全管理と運用管理は初めから重大な欠陥があったということを明らかにしている」。こう話すのは、長年東電を批判してきた福島県いわき市の佐藤かずよし市議会議員だ。佐藤氏が地元メディアをとおして事故のことを知ったのは翌日。佐藤氏は昨夏起こったこの事故について、自らのブログにも詳述している。


 東電と原子力安全・保安院は10年7月に、それぞれの報告書で事故の原因は人為的ミスであったとしている。この件に関し、福島市の東電広報担当者は先日行った電話取材で次のように回答した。


 「協力企業作業員が記録計の交換作業を行っていたところ、記録計付近にある所内電源切り替え用補助リレーに知らずに接触した等、何らかの衝撃が補助リレーに加わり、誤動作した可能性が考えられる」


 福島第1原発2号機で使用されているタイプの原子炉に詳しい米ミシガン大学のジョン・リー教授(原子力工学)は、「何らかの原因による数分間の電力遮断は起こり得る」と述べ、発電所が外部電源の一時喪失に見舞われること自体は珍しくないとしたが、「炉心の水位低下は極めて異常であり、留意すべき重大事象といえる」と述べた。


 専門家らは、原発運営会社は「SCRAM(スクラム)」と呼ばれる原子炉の緊急停止を軽視すべきではなく、スクラムは構造的改修を促すきっかけにもなり得ると話す。電気工学に詳しい米ワシントン大学のロバート・アルブレヒト名誉教授は、「この種のスクラムは原子炉に大きな負担をかけることなる。設計変更をしてもいいくらだ」と述べた。


 事故後、東電と原子力安全・保安院は作業員への注意喚起の必要性は認めたものの、福島第1原発の電力供給網の根本的見直しは要求しなかった。再発防止策として、東電は重要な制御盤近くに作業員の注意を喚起する表示を掲示した。


 原子力安全・保安院は震災発生の5週間前の今年2月、設計寿命の40年を迎える福島第1原発について、稼働年数の10年延長を許可した。


 原子力安全・保安院と東電のトップは、震災後の原発危機を受けて国会で証言した際、この事故についても厳しい追及を受けた。東電の清水正孝社長は5月1 日の証言で、東電の公式報告書では省かれていた事故の詳細について確認した。それによると2号機原子炉内の水位は2メートル低下し、通常レベルに回復するまで約30分かかったという。


 東電は2号機の運転を1カ月停止し、その間に事故原因を協力会社の保守要員によるものと断定した。制御盤背後にある記録計を交換していた際、所内電源切り替え用の補助リレーにうっかり肘が当たったのだ。


 原子力安全・保安院と東電の報告書の記述によると、それによって補助リレーが「瞬間的」に誤動作し、原子炉主電源の遮断器が切られたが、誤動作が極めて瞬間的だったために通常の非常用電源は作動しなかったという。その結果、給水ポンプが停止し、燃料棒を冷やす冷却水の注水が一時的に止まったという。


 補助リレーは、1984年に設置された送電線の系統安定化装置の一部であり、東電が運営するその他の原発にも使用されている。東電は09年、新しい送電線の設置に伴ってそれら装置は不要になると判断し、撤去を決めた。この件について東電広報担当者は、「この系統安定化装置の所内電源切替え用補助リレーを含む電気回路を撤去する計画が既にあった」と述べた。


 10年の事故では、中央制御室の作業員が外部ディーゼル発電機を起動し、原子炉格納容器のベント(弁の開放)を行って、容器下部にある抑制室に蒸気を逃がして圧力を下げたことで、炉心の破損は免れた。東電は報告書で、この措置によって1時間後には水位が回復し、外部に放射性物質が放出されることもなかったとしている。


 原子力発電の専門家によると、燃料棒は酸化ウランを焼き固めたセラミックペレットをジルコニウムで被覆したもので、常に水で冷やしておかないと核分裂を起こす可能性がある。2号機の燃料棒は長さが約4メートルで、通常その2倍の水位の水に浸されている。10年6月の事故では、水位は一時的に6メートル近くに急低下した。


 3月11日の震災では、停電によって給水ポンプが停止してから5時間もたたないうちに、稼働中の原子炉3基のうちの1つで燃料棒が溶け始め、15時間以内に完全に溶解した。2号機を含む他の原子炉内の燃料棒も数時間で溶解した。


 東電は先月、それら原子炉の格納容器がメルトダウンによって破損している可能性があり、それが放射性物質の拡散につながった可能性があることを明らかにした。


記者: Chester Dawson