knjrの日記

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「天下り」とは何か

最近話題になっている「天下り」。世の中でいろいろ議論されているが、根本が分かっていないので本書を読んでみた。

「天下り」とは何か (講談社現代新書)

「天下り」とは何か (講談社現代新書)

本書は元官僚の著者が感情的にならずに、天下りの現状をまとめてくれている。幾つかポイントを

  • 民間企業への天下りは実は1割に過ぎない。最大の天下り先は非営利団体が5割を占める
  • 早期退職制度、年次主義、年金主義の3つが天下りの根源である。再就職が公務員人事の一環になっている
  • 省庁ごとに天下りの実体は大きく異なる。財務省経産省、旧建設省、旧運輸省などは美味しい天下り先が多いが、旧労働省環境省経済企画庁などはほとんどない
  • 官僚にとって美味しい天下り先は収入よりも「傷つかない」「社会的地位」「金にまみれない」ことである
  • 天下りが1回でおわることはまずない。通常は3回以上である。「天下り」=「わたり」である。政府の「わたり」の公表値が低いのは、わたりの定義を狭くしているため
  • 天下りの最大の問題は「天下り用の組織を不透明な形で作っている事」である
  • 2008年に国家公務員が天下りしている特殊法人独立行政法人は約4700。交付金は約13兆円!!
  • 2007年度の役所の随意契約締結率は6割であるが、天下りを受け入れている公益法人に限ると85%まで跳ね上がる
  • 天下りが制度として優れている面も多々ある。業界、役所、政界とのパイプとなり、情報交換・意思疎通を容易にするなど
  • 天下り規制は古くは1970年代、最近では1997、2000、2002年などにも閣議決定されているが、それが守られていないのが問題



↑のように、いろいろと知らなかった事も多かった。で、結局どうするかについては

  • 天下りは状況に応じて進化する。これに対して、規制をすり抜けるようとする「天下り偽装」を粘り強く監視し、天下りを生む「構造的な要因」を取り除くしかない(=抜本的な公務員改革が必要)

とのこと。