三橋貴明氏の出版ペースには毎度驚かされるが、今回は手法を「物語(フィクション)」にしてきた。これもまた驚き!
- 作者: 三橋貴明,さかき漣
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2012/03/28
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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混迷の日本。現在と驚くほど似ていた時代があった。リーマンショック、ユーロ危機VSウォール街大暴落。デフレ円高不況VS昭和大恐慌。東日本大震災VS関東大震災。そして頻繁に失脚する総理大臣…そんな昭和初期に7度の大蔵大臣と首相として日本を世界恐慌から脱出させたのが、希代の財政家・高橋是清だった。
不況が続く201X年、大混乱を経て初々しい女性宰相が誕生した。官邸での就任パーティ。増税・緊縮財政路線の財務省と成長路線の補佐官との板挟みに疲れた霧島さくら子首相は官邸の庭に出ると桜の下で髭を蓄えた和装の老人に会う。二人はお互いを知らぬまま政治、経済状況を語り合うのだが、不思議と平仄が合う。さくら子は老人の確信に満ちた話に感銘を受け、それをヒントに、財務省の筋書きとは違う大胆な経済成長策を打ち出す。果たしてそれが奏功し、日本はデフレ不況から脱することができるのか。
何度かの邂逅で、さくら子は、老人はもしや高橋是清翁では、と思い始める。ということは…老人は2月26日に大変な不幸に巻き込まれてしまうではないか!どうする、さくら子!
笑って泣いて、日本と世界の経済の仕組みがストンとわかる傑作小説誕生!
内容は、三橋氏が強く訴え続けている『デフレ時に行うべき経済対策』であるが、それをフィクションに通して分かり易く説明してくれている。自分も高橋是清については未だ詳しく調べていないのであるが、昭和初期のデフレ時に必要な対策を行い、デフレ脱却に導いた事実は非常に興味深い。
本書は鈴木康士氏のカバー・イラストや、主人公の名前にあるように、「さくら」を物語の中心に貫いているころもあり、是非とも、今このさくらの季節に読んでいただきたい。三橋氏の他の著作を読んでいる人も、そうでない人も!
ちなみに三橋氏は本書の映画化も狙っているとのこと。