knjrの日記

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幸福な食堂車 ― 九州新幹線のデザイナー 水戸岡鋭治の「気」と「志」

幸福な食堂車 ― 九州新幹線のデザイナー 水戸岡鋭治の「気」と「志」

幸福な食堂車 ― 九州新幹線のデザイナー 水戸岡鋭治の「気」と「志」

JR九州のオリジナリティあふれる車両たちをデザインした水戸岡氏の記録。無機質な鉄道車両や駅に「デザイン」という新たな付加価値を創造していった。外見のデザインだけでなく、それを使う乗客の気持ちになった上で、受け手が何を感じるかをイメージし、それを地元の伝統技術や工芸品を使って表現していく。更にJR九州の社員だけでなく車両製造会社や地元の伝統工芸技術者まで巻き込んでいくリーダーシップ。何となくスティーブ・ジョブスの臭いがする。


鉄道に詳しくない方もJR九州の紹介ページを見ていただければ理解していただくとができると思う。百聞は一見にしかず。
http://www.jrkyushu.co.jp/trains/index.html
是非とも外見よりも社内の内装に注目してほしい。



という自分も実は水戸岡氏デザインの実物の車両は富士急行しか見たことがない。↓のような本や映像も見たいが...

旅するデザイン 鉄道でめぐる九州 水戸岡鋭治のデザイン画集

旅するデザイン 鉄道でめぐる九州 水戸岡鋭治のデザイン画集


是非とも実際に九州に足を運んで列車に乗ってみたい!


水戸岡氏については、ネット上の以下のような記事も参考に
http://goethe.nikkei.co.jp/human/110915/
http://president.jp/articles/-/7140
http://www.hitachi-solutions.co.jp/column/samurai/feature/76/


最後に本書の中から心に残った部分を3箇所ほど


デザイン力とは、整理整頓する能力だと水戸岡は思っている。ヒト・コト・モノが大混乱しているところに行って、整理整頓する。景色は、建物は、世の中は混乱している。この混乱を正し、清掃して、美しくわかりやすくるるのが本当のデザイン力だと信じている。ずれている椅子の位置を直す、汚れがあれば雑巾で拭き取る。色が剥げていれば塗り、壊れたものがあれば直し、汚いものが張ってあれば剥がす。ある意味では簡単あことなのだ。何かを貼る以上は、きれいな文字で、きれいな色で、きれいな額に入れて張れば。デザインは決して特別なことではない、というのが水戸岡の基本的な考え方であった。
富士吉田駅から富士山駅へ衣替えする前に)



人が自分のことを試そうとしているときに、お金のことを言っていては何もできない。仕事にはパン仕事と花仕事がある。お金を稼ぐためのパン仕事と挑戦的で未来につながる花仕事。日常的に日銭が入るシステムを持たないで夢ばかり追っていることはできないが、花仕事が来たときには全力でぶつかっている。そのためにパン仕事でストックしておく。花仕事は世の中のためだったり、公共のためだったり、お金がついてこないことも多い。でも、誰かがやらなければならないのなら、身銭を切ってやるしかない。身銭をきってやっていくことには何らかの新しい可能性がある。
(初の鉄道車両デザイン「アクアエクスプレス」のデザイン時に)



JR九州の社員の中には、「水戸岡は好き放題やっている」「美しく飾り立て、きままに列車をデザインしている」と思っている人間がいるのも水戸岡は知っている。だから、「デザインは、色形の問題ではなく、思いの問題、気持ちの問題、生き方の問題、すなわち生きている姿勢そのものをデザインというのだ」と社員にあえて言ったりする。水戸岡が伝えたいのは、経営的なアイデンティティ、完成のアイデンティティ、礼儀作法のアイデンティティだ。そうしたものを総合的に持って進まない限り、企業としては伸長しないし、安全で安心できる公共の乗り物を運営する会社にはなれない。そのために視覚的な部分から始めるべく、グラフィックデザインをし、道具をデザインしている。「整理、整頓、清掃、しつけ」が企業の根幹だと言い続けている。すべては、そこに関わる人の意識の問題なのだ。その意識が変わらない限り、いくらデコレートしても、コーディングしても、本質は微塵も変わらないのである