knjrの日記

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安心と安全

安全。でも、安心できない…―信頼をめぐる心理学 (ちくま新書)

安全。でも、安心できない…―信頼をめぐる心理学 (ちくま新書)

を読んだ。同じ著者の前作「リスクのものさし」の内容から、最新の調査結果が付け加えられている。
私の読み取ったポイントは

  • 安全とは危険性の少ない「現実の状態」、安心とは大丈夫と感じる、人々の「心の状態」。安全であれば、安心になるわけではない
  • 信頼の非対称性原理:信頼を得るためにはたくさんの肯定的事実と時間が必要であるが、失墜するのはあっという間
  • 二重非対称性モデル:信頼されていれば、ますます信頼され、信頼されていなければ、ますます信頼を失いやすい
  • 信頼には「リスク管理の能力」と「リスク管理の姿勢」。前者は専門知識・技術、資格、経験など。後者はまじめさ、中立性、透明性など。前者だけでなく、後者も重要である。
  • リスク管理では「リスク管理の姿勢」が大切。平常時こそ、安全に対して誠実であることを積極的である姿勢を示すべき。(→某エレベータ会社のような例か)
  • 対象事象に関心の高い人は『価値感の類似性』が信頼となり、低い人は『公正さ』が信頼の指標となることが多い。
  • 現代の世の中には様々なリスクがあり、それらを全て自分で調査してリスクの判断などできない。そのため信頼が重要になる。
  • 人間には「認知バイアス(偏り)」があり、それがリスク認識にも影響している。人の情報処理には「理性的」、「感情的」の2種類があり、後者がバイアスと関連している(→行動経済学とも関連かな)



仕事であるセキュリティに関係して、何となく感覚で漠然と感じていること文字にしてくれている点で、非常に面白く、かつ役に立つ本であった。興味のある方は「リスクのものさし」と合わせて、是非一読することをお勧めする。