- 作者: ジョンパーキンス,古草秀子
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2007/12/14
- メディア: 単行本
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EMHの典型的な手口を訳者のあとがきから引用すると
- 石油などの豊富な天然資源を持つ途上国の指導者に対して「世界銀行の融資を受けて国家を近代化すれば飛躍的な経済成長を達成できる」と言葉巧みに持ちかけ、その国に巨額の債務を負わせる。
- 実のところの融資された金は巨大なインフラ工事を受注するベクテルやハリバートン(チェイニー元副大統領は元CEO)などの米企業と、現地の利権を握っているほんの一部のエリート層の懐に流れる
- 庶民の暮らしは全く良くならず、それどころか、債務はとうてい返済しきれず、貧しい者はさらに貧しくなる。
- さらに債務国の政府は債務の罠に絡めとられて、天然資源や国連の議決権を奪われたり、米軍基地の設置を強いられたりすることになる
- もっと恐ろしいことにEMHが途上国の指導者の取り込みに失敗すれば、さらに邪悪なジャッカルの出番となり(指導者を暗殺する)、それが失敗すれば軍隊が出動する。
著者のパーキンスは民間のコンサルタントとして、近代化による経済成長についてオーバーな楽観的な予測を出すことで、途上国に債務を負わせやすくする役目を背負っていた。その視点からインドネシア、サウジアラビア、パナマ、エクアドル、イランを実体験を本書で語っている。
ここ最近は、腐敗する米国の政治、石油産業、軍需産業、世界銀行やIMF、世界の貧困問題などの分野での情報をそれなりに集めてきたが、最後のワンピースがこれだ。
おそらく本書だけ読んでもぴんと来ない人もいるかもしれないが、分かる人には分かるはず。動画を見た人も、本書も是非とも読んでほしい。自分にとって、今年前半の最大のヒット書籍である。
自分は途上国を旅行することが好きだが、そこで感じる途上国と先進国の発展の差は「人々の勤勉さ&努力の差」だと思い込んでいた。それも全く無いとは言わないが、本書のような先進国(特に米国)による、途上国からの搾取が大きな原因だということがよくわかる。
著者が本書の最後に言っている様に、この流れでいくと、EMHの次のターゲットはベネズエラのチャベス大統領の番である。米国が裏で手引いたクーデターを何度か仕掛けられているが、何とか持ちこたえている。
自分が1997年にギアナ高地へ行くためにベネズエラに入ったときには、チャベス政権の前。確かに地下鉄のエスカレータや改札機は動かないし、バスはオンボロ、カラカスの貧困もひどかった。マラカイボ湖の石油のお金はどこへ行ったのかと思っていたが、そういうことだったのかと今は良く理解できる。
中南米ではベネズエラに続きボリビア、エクアドル、ニカラグアなどでも米国に『NO』を言える政権が頑張っている。彼らがEMHやジャッカルの餌食にならないように祈りたい。