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ルポ 貧困大国アメリカ II

ルポ 貧困大国アメリカ II (岩波新書)

ルポ 貧困大国アメリカ II (岩波新書)

衝撃的な一冊。こんなことが世の中で許されてよいの!!!
日本でも貧困ビジネスの問題が取り上げられるようになってきたが、米国のそれは次元が違う。


本書では貧困大国の例として、『学生の借金地獄』、『崩壊する社会補償』、『医療改革』、『刑務所という名の巨大労働市場』の4つを取り上げている。特に『学生の借金地獄』と『刑務所』の件は、日本のマスコミにも取り上げられる事は稀であり、内容も現代の奴隷制そのものである。そこまでして弱者から金を巻き上げて儲けたいのか。米国は恥を知れ!である。


『学生の借金地獄』

  • 1980年代に州の財政が厳しくなり、大学は人件費を下げる代わりに、学費を上げ始めた。教員の知名度によって学生と外部からの研究資金を集めているので、教員の給与を下げる事ができない。学費は1995年から2005年の間に59%も上昇している
  • 更に、大学には格付け制度なるものもあり、そのために大学は豪華な設備への投資を行い、その費用を学費に転換している
  • 学生の親達は、自分達の世代は授業料が安かったため、子供の大学での学費の準備をしていない(=蓄えをしていない)。昔は7割を政府がカバーしていたが、今は平均で3割ほどしか政府はカバーしてくれない
  • 学費に困る学生(全体の3/4にあたる)は学資ローンから借金する事になるが、その学資ローン自体が住宅ローンと並ぶ巨大マーケットとなって学生から高利で搾取をしている。無知な学生が多く、借金する際に高い金利であるという認識がない点も問題
  • 学資ローンは借り換えが禁止されていたり、消費者保護法から除外されていて自己破産の際の借金残高免責も対象外となっているなど、住宅ローンと違い、一生(+死んでからも)借金の取立てに追われる事になる
  • 更にに今の不景気で学位さえ取得すれば高給が得れるということがなくなって、借金を背負ったまま自給10ドル以下の職業を転々とすることになる



『刑務所という名の巨大労働市場

  • 刑務所内での労働対価はわずか時給1ドル前後。生活に使うトイレットペーパーなどの日用品、部屋代、食費などを請求され、刑務所内で借金漬にさせられる。歯磨き粉(約6ドル)を買うために、50時間以上も働かなくてはならない。
  • 米国の刑務所では社会復帰させるための職業訓練や教育は、州のコスト削減も真っ先の対象となった。出所しても多くが再犯で刑務所へリターン。
  • 更に「スリーストライク法」が成立し、罪の重さに関係なく、3度目の有罪判決を受けると終身刑となる。実際に終身刑になる若者が多い
  • 刑務所は連邦刑務所と民間刑務所があるが、どちらも内容は酷いが、民間のほうが状況が惨い。民間は1990年には5箇所しかなかったが、10年間で100箇所以上になり、巨大ビジネスになっている
  • レーガン政権での規制緩和をきっかけに、途上国への外注が増え、雇用環境が悪くなってくる。1990年代になると、それに伴う訴訟が増え、企業はもっと使いやすい労働力を探し始めた。その結果、非正規雇用者や発展途上国よりも安い数百億ドル規模の刑務所市場にスポットライトが当たった
  • 刑務所市場は家具の組立てなどだけでなく、電話交換手や戦争で使う防具まで様々な業種に及んでいる。
  • 刑務所REITなるものまで出現し、ローリスク、ハイリターンの商品として人気がある投資信託になっている
  • ”テロや凶悪犯罪への恐怖”を煽り立て(統計的には凶悪犯罪は増えていない)、刑務所産業複合体を巨大ビジネスにしている。刑務所REIT、通信会社、建設業界、囚人輸送サービス、セキュリティ業界、囚人用の各種サービス業者や医療業界などが、ロビー活動で政治家、メディア、警察、司法などへ複合体に都合のよう方向へ圧力をかけている