福島原発での震災以後、入手困難になりつつある本が入手できた。
- 作者: 広瀬隆
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2010/08/27
- メディア: 単行本
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著者の主張ポイントから幾つか...
- 1000〜2000年の長期視点で見ると、東海地方では周期的に巨大地震が発生しており、今後30年の間に発生する確率はかなり高い(70%程度)。その地震規模は1〜2m程度の地盤隆起や1〜2分の継続時間を伴う。
- 地震による揺れを決めるのは、地震の特性にもよるが、震源からの距離ではなく、動いた断層からの距離と地盤の強さが重要である。ところが実際には、「金井式」と呼ばれる震源からの距離を用いた計算式で計算していた。
- 原子炉本体をいくら強固にしても、原子炉母屋とタービン室が別々の耐震基準で建設されており、地震発生時にはそれらの間を繋ぐ配管の溶接部分や電気配線が壊れて、原子炉内の熱を下げる事ができなくなる点が問題である
- 想定される東海大地震より、かなり規模の小さい駿河湾地震(2009年8月11日発生)でも、浜岡原発の耐震基準「設計用耐震基準S1」である600ガルまで達してしまった
- 原発の安全性確保には機械工学や材料工学の知識は不可欠だが、大手メーカーは材料メーカーから納品された材料を組み立てるだけの「組み立て屋」であり材料工学の専門家はいない。また電力会社にいたっては大手メーカーから納品された原発を運転しているだけで、いずれの工学の専門家もいない「運転屋」である
- 青森の六ヶ所村再処理工場、新潟の柏崎刈場原発、石川の志賀原発、静岡の浜岡原発のいずれの施設も、縄文時代に海底だった軟弱な地盤上に建設されている(数十メートル掘らないと岩盤に突き当たらない)。
- 1964年の最初に原子力安全委員会が策定した「原子炉立地審査指針」には、「地震が多発する場所に原発を建設してはならない」と定めていなかった。その理由はプレートテクトニクス理論が確立する以前に策定したため。
- 電力会社は、地盤が強固な土地を選定するのではなく、建設地を選定した後に、その安全性のアリバイづくりの地質調査を実施していた。それに力を貸していたのが、電力会社に顧問として雇われていた地質学者や地震学者(いわゆる御用学者)である。
- 電力会社が活断層が見つかったとしても、御用機関である地震予知総合研究振興会という組織の御用学者を使い「この断層は、死んでいる」と言わせ、そこに原発を建てさせる。過去に、実質的に地質や活断層が問題となって、原発の候補地から外された土地は一つもないのはそのためである。
- 2006年になり、やっと「原発耐震指針」が改訂され、それ以後に建設される原発はそれを満たす必要性があった。しかしながら、翌年2007年の新潟県中越沖地震で、わずかマグニチュード6.8の中規模な地震により柏崎刈羽原発が大きな被害をうけ、新指針の信頼性が失われてしまった。2010年8月現在でも耐震性をどこまで引き上げるのかについての審査が続いていた
- 日本の原発震災の危機の大きな原因は「人間が悪意を持ってしまったこと」である。一例として六ヶ所村の再処理工場には2本の断層が走っていたが、見て見ぬふりをして放任をしていた。放任をしていた連中の中には、国の審査を担当しながら同時に電力会社の顧問をしていた者もいる
- 日本は、世界の各国が危険性等から開発を断念した高速増殖炉にこだわっていたが、1995年の”もんじゅ”の事故で断念をした。しかしながら六ヶ所村で再処理したプルトニウムの利用目的が無くなったことを隠すため、プルサーマル計画を持ち上げてウランより危険なプルトニウムを、既存の原発で燃料として用いる事になった。
どれを書けばよいのか非常に迷うが、ざっとこんな感じである。今の福島原発の報道を見ていく上で意識しなければいけないこと、またその先にどんなリスクがあるかを考えるきっかけになると思う。ダイヤモンド社も早く増刷をして、多くの人に読んで欲しいところである。