knjrの日記

登山、鉄道、写真、カメラ、旅行、読書記録などの思いつくままに

経済復興―大震災から立ち上がる

復興財源に関して、国会での増税議論に加えて、IMFも消費税引き上げでまかなわれるべきと提言してきている。特にIMF内政干渉はいい加減にしていただきたい。


経済復興: 大震災から立ち上がる

経済復興: 大震災から立ち上がる

本書の主張は「日本経済が長期にわたるデフレ不況であることを考慮して、復興財源を増税ではなく復興国債に求めること。さらにその復興国債は民間に売却するのではなく日本銀行に引き受けさせること」を提案している。
更にその際には以下のような論点に対しては、政府は国民に丁寧に説明し約束をすべきと。


●日銀の国債引き受けの論点の1点目:「日銀の国債引き受けが超インフレを招くのでは」
「超インフレを招くかどうかは、その時の経済状態と、いつまで日銀が引き受けを続けるのかに依存する」とのことである。具体的には

  • 長期にわたってデフレで経済が停滞している状況では、国債の日銀引き受けそれ自体が超インフレをもたらす可能性はない。ただしデフレを脱却して、4%程度のインフレが実現した後も、国債の日銀引き受けを続ければ、超インフレになる可能性はある。
  • 国債の日銀引き受けを実施する場合には、金融政策の運営において、当分の間、3〜4%程度のインフレ目標を設定し、日銀にその達成を義務付ける。その後、日本経済が安定軌道に乗ったことが確認された段階で、目標インフレ率を主要国並の2%程度に引き下げることが適切


●日銀の国債引き受けの論点の2点目:「国債価格が暴落するのでは」
「日銀が国債を引き受けると、政府が財政資金を簡単に調達できるようになるため、財政規律を喪失して、赤字国債を乱発する」と、金融機関や投資家たちが心配して、国債を大量に売るようになるために、国際価格が暴落する
政府が次のことを国会で決議すれば暴落を防止ができる①政府は3〜4%のインフレ目標を設定する②インフレの上限(4%)を中期的に越えないように、復興国債の引き受け額を調整する③インフレ率が目標インフレ率の上限を超えてまで、財政支出を野放図に拡大する事はない④復興が軌道に乗れば、目標インフレ率を主要国の2%程度に引き下げる


国債の民間引き受けではなく日銀引き受けとする理由については、いずれの場合も復興費だけ財政支出が増加する事には変わりないが、民間引き受けでは国民が保有する貨幣保有額は増加しないことに対して、日銀引き受けでは貨幣保有額が増加する。貨幣保有額が増加すれば、その分だけ、民間が使う事ができる貨幣が増加することによる需要拡大効果がでてくるためとのこと。


また戦前、高橋是清が日銀の国債引き受けを実施したために超インフレが起きたという説があるが、実際には、日銀の国債引き受けに経済は順調に回復していた。超インフレになってしまったのは、高橋が経済回復の確認後に財政支出を抑制しようとしたのにもかかわらず、軍部が戦争遂行のために軍事費の調達のために支出を続けたからである。高橋の日銀の国債引き受けが超インフレの原因ではない。