knjrの日記

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国富新論

国富新論

国富新論

  • 国家にはレイヤがあるのだが、規制緩和が大好きな構造改革主義者は、それをまったく理解していない。国家のレイヤには、規制緩和をしてよいレイヤ(第4,5層)と、規制緩和をしても一部の企業の利益だけとなり国民の所得や生活を破壊するレイヤ(第1〜3層)の二種類がある。下図が「国家の階層」


  • 第1層から第3層で重要なことは「世界で戦う力をつけること」ではなく、「自国で供給能力(質+量)を保つこと」である。これは「ナショナル・セキュリティ」つまり国の安全保障の問題である。インフラ的な産業を「他国にまかせて」、国の安全保障が維持されるわけがない。特に日本の場合は自然災害が多く、災害時に地場の建設企業がないと国民が死ぬ事になるので、ある程度の市場競争の元、建設企業を生き延びさせる必要がある。実際に、米国はどれだけ「市場権利主義」を推進しようとも、インフラのうち「農業」「防衛」「エネルギー」については、それが「国家の根幹」であることを理解し、決して他国に頼ろうとしない。
  • 第4層「産業的インフラ以外の産業」代表的な例はインターネット商取引。これらは「デフレ期」でなければ、規制緩和を実行しても構わない
  • 第3層と第4層を行ったりきたりしている防衛産業のような分野もある。普段は民間需要なので第4層であるが、自衛隊の仕事を請けた場合には、第3層になる。第4層での受注が減少し、日本の造船技術が衰退すれば、海上自衛隊の艦船の建造や整備ができなくなり、日本の安全保障が揺らぐことになる。理想的な状態は、「第3層は『競争』と『継続維持』が混在し安定し、第4層は市場競争が行われて質的向上が図られている」状態。
  • 産業競争力会議に代表される安倍政権下の今の規制緩和により、レント・シーキングが横行し、所得を奪われる国民が増えていけば、社会が不安定化し、民主主義が混乱することは避けられない。米国ではそれが進んでしまい異常な所得格差が常態化してしまっているが、日本は『まだ間に合うレベル』である。国民が「国家」あるいは「政治」の本当の意味を知り、一人一人が「経世済民※」のために動き出せば、我が国は再び「国民全体が豊かになれる日本」を取り戻すことができる。そのためにはまずは、政治の意味、規制緩和の正体、レント・シーキングの実態について、国民が正しく認識し、自分たちの代弁者たる政治家に、個人個人が働きかけなければならない。

経世済民:「世を經(おさ)め民を濟(すく)う」こと。つまり民を救うために様々な公的対策を行わんとすること。