knjrの日記

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「ただちに健康に影響が出るものではない」という表現について

政府、マスコミは放射能汚染された食品に対して「ただちに健康に影響が出るものではない」と繰り返している。こういった抽象的な表現をする理由は何であろうか?

  • もう食べてしまった人に対しては安全と言いたいが、やっぱり食べないほうがよいことを伝えたい?
  • 実は危険であるが、抽象的な表現をすることで「大きな危険ではない」ように見せかけたい?
  • 危険であるか安全であるか、どの位危険なのかが、実はよく分からない?

ちょっと考えてみました。


その前に、そもそもなぜ「暫定規制値」なのか、”暫定”なのか?
調べてみると食品衛生法の中で、暫定的に原子力安全委員会により示された「原子力施設等の防災対策について」の中の「食物の摂取制限に関する指標」を参考にしているようです。内容を見てみると...


<飲食物の摂取制限に関する指標>
飲食物摂取制限に関する放射性元素として、放射性プルームに起因するヨウ素、ウラン及びプルトニウムを選定するとともに、旧ソ連チェルノブイル事故時の経験を踏まえてセシウムを選定した。そして、これらの核種による周辺住民等の被ばくを低減するとの観点から実測による放射性物質の濃度として表3のとおり飲食物摂取制限に関する指標を提案する。
なお、この指標は災害対策本部等が飲食物の摂取制限措置を講ずることが適切であるか否かの検討を開始するめやすを示すものである。
その暫定基準の作成に携わったという専門家の方が、3連休の某テレビ番組に出演されていました。その中で、この暫定規制値自体がチェルノブイリの情報だけを元に作っているので(サンプル数量としては不十分であるので)、危険性の詳細について言い切れないということを話していた。


これは推測だが、人体が直接浴びる放射線については、日々放射線を浴びる業務に携わるレントゲン関係者や原発関係者の安全を守るために、放射線量の人体への影響は研究されてている。その一方で、食品に含まれる放射性物質濃度については、通常時には研究する必要がないので結果的にデータが不十分だったのではないか。そのため「何をどのくらい食べれば、どんな症状になる可能性が、どのくらい増える」とまでは言えないのではないか。


チェルノブイリでの経験から言えることは、小児甲状腺がんの発症率が高くなる可能性があるということである。
内閣府原子力委員会「チェルノブイリ原発事故後の健康問題」から冒頭だけ引用すると...

1986年4月26日未明、人類史上最悪の原発事故が旧ソ連ウクライナ共和国のチェルノブイリ原子炉4号炉で発生した。すでに14年が経過したが、数百万Ciの放射線降下物による環境汚染と一般住民の健康問題、さらに除染作業に従事した消防士や軍人の健康問題など懸案事項は今なお未解決のままである。むしろ経済状況の悪化や記憶の風化とともに、急性放射線被ばく問題から、晩発性障害に現地では論点が移りつつある。しかし、日本では、先の東海村臨界事故で再度急性放射線障害やその対策が、チェルノブイリ原発事故を教訓に問題となっている。現地の住民達は、事故後長年に渡り放射能の目に見えない影響に対して、不安を持ち続けなければならない被害者意識の中で、精神身体影響問題が大きな関心事となっている。それでは今一体チェルノブイリ周辺では何が起きているのか、著者らの10年にわたる現場での医療支援活動を元に、最近の知見について小児甲状腺がんの多発問題を中心に紹介する。
1996年4月の事故後10周年では、IAEA/EC/WHOの国際共同会議での報告どおり「チェルノブイリ周辺では1990年から激増している小児甲状腺がんのみが、唯一事故による放射線被ばくの影響である」、と世界中の科学者が合意している。
残りはリンク先で確認していただきたい。


最初の話に戻るが、抽象的な表現を使う理由は、正直なところ、ここで断定はできない。
情報源はいろいろあるので、マスメディアの情報を鵜呑みにせず、自分で調べた上でどこまで信じるかではないでしょうか。