knjrの日記

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原発・正力・CIA―機密文書で読む昭和裏面史

先月紹介した『原発導入のシナリオ 〜冷戦下の対日原子力戦略〜』の中で、読売グループの正力松太郎氏が原発導入の推進役をしていたことわ分かった。ただ何故メディアのトップが”原子力”を推進したか、その理由がよく分からなかった。

原発・正力・CIA―機密文書で読む昭和裏面史 (新潮新書)

原発・正力・CIA―機密文書で読む昭和裏面史 (新潮新書)

本書はその理由やCIAとの関係を公開された秘密文書を元に明らかにしている。


正力が原発を推進した理由とは、自ら推し進めていたマイクロ波構想」を達成するための道具として使ったに過ぎない。マイクロ波とは本文中から引用すると...


原子力に出会う前の正力にとって、最大の関心事はマイクロ波通信網の建設であった。これはテレビ導入のときからの正力の悲願だった。
 マイクロ波とは波長がきわめて短い電波で、第二次世界大戦中にレーザーの開発により注目されるようになった。その後、音声、映像、文字、静止画像など大容量の情報を高品質で伝送できることがわかったため放送と通信にも用いられるようになった。
 正力はこの通信網を全国に張り巡らせてテレビ、ラジオ、ファクシミリ(軍事用、新聞用)、データ放送、警察無線、列車無線、自動車通信、長距離電話・通信などの多重通信サーヴィスを行おうと計画していた。これはあらゆるメディアを一挙に手中にすることを意味する


当時、この「マイクロ波構想」を推進するに当たって電波三法が大きな壁となっていた。正力はその壁を破るための政界工作をしてみたが、思い通りには事は進まなかった。結局、自らが政界に進出して強大な権限を手に入れない限りマイクロ波構想を実現できないという結論に至った。ただし正力には政治家としてのキャリアも派閥もないため、求心力を得るための何かが必要だった。その前に現れたのが原子力である。正力は自らの持つ読売というメディアを使って、原子力の推進役となり、原子力発電所を建設し商業発電をするという実績により総理大臣を手にしようとしたのである。


また”米国は原子力を平和利用に取り組んでおり、それは西側諸国に恩恵をもららす”そう伝える事によって反原子力・反米世論を鎮めたいCIAが、正力の持つ読売のマスメディア力を利用しようということになり、お互いに利用した。


結局正力の日本最初の原子炉(東海村)を自らが原子力委員長のときに完成させる事ができたが、本来の夢をかなえる事はできなかった。


ここからは私論だが、おそらく正力が推進していなくても誰かが正力と同じ役目をして原子力を推進したことだろう。また原子力は国民合意形成された上で開始された事でない事もよくわかった。


ちなみにこのときに米国とCIAが原子力の推進を一緒に行っていたのが、なんとディズニーである。プロパガンダ映画「わが友原子力 :Our Friend the Atom」を、1958年に日本テレビで放映したとのことです。英語版がYoutubeにありました。↓