「原発のウソ」と並び、私の中の今年度上期のNO1の本である。ハードカバーで350ページ以上あるが、あっという間に読んでしまった。
- 作者: 古賀茂明
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/05/20
- メディア: 単行本
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著者の一番の主張ポイントは”公務員改革”である。以下に簡単に。
現在の国家公務員制度の本質的問題として、官僚が国民のために働くシステムではなく、内向きの論理(自分の所属する省庁の利益、すなわち天下り先の確保、権限の拡大、予算の確保等)で動くようになっている。その理由は公務員が縦割り組織であるため、一度入省すると、国民のためではなく、その省庁の利益、すなわち権限・予算・天下り先の拡大と縄張り争いのために働かないと出世ができないため。日本人が勤勉でよく働くし教育レベルも高いにもかかわらず日本経済が衰退しているのは国を動かす仕組みが悪い。国を動かす仕組みを考える官僚が悪いからだ。まず手をつけるべきは公務員改革である。そのため国民の利益が大きく損なわれていること。
著者のスタンスは↓の動画が分かりやすい
他にもイロイロと、凄い内容のお話が...
- 今回の福島原発の事故も現状の公務員問題と大きく関係がある。東電と経産省およびその傘下にある原子力保安・安全院との癒着が引き起こした人災である。公務員改革を行わなければ、再び同じような人災が引き起こされる。
- 東電は日本で自分が一番偉いと思っているらしい。理由は経済界において断トツの力を持つ日本最大の調達企業であり(電気料金を利用者に転嫁できるので)、調達時には殆ど値切らないで購入するから。また自民党には献金で、民主党には電量総連から、テレビ局や新聞社には巨額な広告料で、それぞれ支配を確立しているため、誰も東電には逆らえない構造になっている。
- 震災直後に増税の動きが即時に動き出した。仕組んだのは財務省。財務省が増税したい理由は、財政危惧を危惧している以上に、増税により自分達の支配道具である予算の配分権限もそれだけ大きくなるため。先日の事業仕分けでも、特別会計を支配するという既成事実を作る事に成功している。
- 財務省は人事院の給与課長を財務省出向者の指定席にすることで、政府の組織・給与を完全に支配している。そのためその他の省庁は財務省に査定権限を握られているため、財務省の要求(天下りを含めて)を簡単に断る事ができない。さらに官邸にも官房副長官や総理や官房長官の秘書官に財務省出向者の指定席を用意して、官邸にまで権限を拡大している
- 昨年、民主党の長妻大臣が事実上の更迭させられたのは、財務省と国税庁との切り離しをする改革を推進しようとしたから。財務省が配下の国税庁にこだわる理由は、国税庁がは査察権があるから。さらに財務省は、マスコミや国会議員に対しても、国税庁の査察権をちらつかせて脅しの道具うことで、逆らえないようにしている(財務省は絶対に認めないだろうがとのこと)
- 民主党の政治主導という掛け声はよかったが、行う実力がなかったというか、政治主導の意味を分かっていなかった。政治主導をやろうとれば、それに賛同する優秀な官僚を見つけてきて、省庁を気にせず一本釣りしてきて、彼らと協力していく必要がある。(小泉前総理が、飯島勲氏や竹中平蔵氏などの自前のチームを持っていたようなイメージ)
- 本気で政治主導をやるたいのであれば、掌握する要素は「政策立案」、政策を実施するための「組織と人事」、「予算」である。これを官邸に集約し、総理の司令塔として各省庁に指示する仕組みに変える必要がある。
- 電力会社は独占なのでいくらでも儲けられるが、あまり儲けすぎると電力を下げろと言われるので、福利厚生を充実させたりフリンジ・ベネフィット※を拡大するなど、無駄な経費に注ぎ込んでいる。
- 霞ヶ関の官僚組織は日本最高の頭脳集団で、彼らに任せておけば何とかしてくれるという幻想を抱いている国民も多いかもしれない。こんな幻想や公務員は中立であるとう考えを国民は捨てるべきである。
- 今の日本の状況を考えると、最初にするべきはデフレ対策である。デフレが経済活動を停滞させている大きな原因である。デフレを解消し、資産を売りに出して、同時に成長戦略を描く。それにより経済の成長率を押し上げることができる。
古賀氏の主張するの東電処理については、以下の動画が分かりやすい。
東電のために国民に原発事故のツケはおかしい!その1
http://video.fc2.com/content/20110507vfKquXgv/
東電のために国民に原発事故のツケはおかしい!その2
http://video.fc2.com/content/20110507mxdC6sU3/
- 債権者、株主にも責任を
- 大切なことは、補償金の支払いと電力供給
など
※フリンジベネフィットとは(NRI経営用語の基礎知識)
給与所得者に与えられる、現金給与以外の経済的利益のこと。近年、多様化する社員のニーズに合わせたカフェテリアプランが登場している。代表的なフリンジベネフィットとしては、保養所・託児所・社宅などの供与、社内レクリエーション費の補助、社内融資制度(市場金利よりも好条件)、家賃補助、食費補助、通勤用定期券支給、自己啓発費用補助などがあります。