- 作者: 斎藤貴男
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2011/07/28
- メディア: 単行本
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取材を重ねれば重ねるほど、考えることばかり増える仕事だった。民主主義の建前など欠片さえも残っているのかどうか。この国には政府や巨大資本の意向がまずあって、いわゆる民意はそれらに都合よく誘導されていることが義務づけられているのでしかないとさえ思われる場面を幾度となく見せつけられた。
単に情報操作ちうのとは異なっている。もっと深いところで、莫大なお金が使われ、マスメディアだけでなく、社会のあらゆるメカニズムが動員されて−−−−。
著者は書き終わった後にこのような感想を持ったようだが、読んでみても同じ感想を持たざるを得ない。
おそらく昔から民意の誘導が行われていたが、それが国民生活を良い方向にするのであれが個人的には一向に構わない(流行色の例など)。しかしながら、原発導入での民意誘導が明らかになったように、明らかにに民意と反する事について、「それが民意だ」と報道されることについては閉口する。特に最近は、大手広告代理店が意図的に広告と区別のつかない戦略PRを用いる事により、庶民にはそれが単なる広告なのか、民意誘導ないのかの判別が困難になっている。電通をはじめとする、広告代理店もそれにより独占的に莫大な収入を得ている。
本書ではそのような事例を取り上げて、
- 原子力政策の例:NUMOのスポンサーの番組内で、あたかも一般教養番組のように見せているが、実は世論を誘導している
- 裁判員制度の例:最高裁、電通、共同通信(地方紙への配信会社)、全国地方紙が四位一体で、裁判員制度の検討中のタウンミーティングで世論誘導をしている(この四位一体の仕組みは、総務省の市町村合併フォーラムなどでも同じ手口が使われた)
- 東京五輪の誘致の例:読売新聞は自ら誘致委員のオフィシャルスポンサーであるため、調査方法の詳細を公開しない不明瞭なアンケート結果について、賛成が多いというような世論誘導をしていた。その裏では、東京五輪の招致本部からの委託契約のうちの、8〜9割が電通に流れていたとう事実もある。http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2009-03-12/2009031201_04_0.html
- 広告会社が国策広報へ関心を強めている背景には、広告市場の縮小がある。インターネット広告が当たり前になり、広告主はネットの行動ターゲティングに慣れ、4媒体(新聞、雑誌、テレビ、ラジオ)に対して、費用対効果を厳しく追求するようになってきた。
マスコミの報道を鵜呑みにし思考停止していると、我々国民の不利益な方向へ誘導される。そういう世の中であることを認識することが重要になっている。