knjrの日記

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復興増税の罠

衆議院議員、元名古屋市長である河村たかし氏の最新書。増税反対論を、河村氏らしい平易な言い回しや、公開データを用いて説明してくれているので分かりやすい。

復興増税の罠 (小学館101新書)

復興増税の罠 (小学館101新書)

  • 消費税を1%上げる毎にGDPは0.4%下がるといわれている。これを続けていくと、経済成長が鈍化するのに消費税だけは取られ続ける。増税は確実に消費を蝕み、税収が落ちて更なる増税を生む口実になる。これこそが増税大好きな財務省の罠である。
  • 今復興に必要なのは、増税ではなく民間企業に金を回すために、企業が投資しやすくなる税制措置の導入である。
  • 日本はギリシャとは異なり「借金漬け」ではない。日本の銀行は預貸率(預かった金をどれだけ貸しているか)が70%程度しかなく、金が余っている。企業もリスクをとって投資したなくない、銀行もリスクの高い企業へは貸したくないという構造である(※)。銀行に金が余っているのに、政府が国債を発行しないと、銀行は潰れてしまう。
  • 国内の投資先が不足しているという、過去に経験しなかったことが今起こっていることもあり、財務省官僚は有効な対策を打ち出せない。経済は時代と共に変わり続けているのにもかかわらず、財務省は「借金(国債)=悪」という昔からの理論を財政健全化論や均衡財政論などと言って正当化している。更に財務省記者クラブがメディアから援護射撃し、世論を財務省寄りの思想へ誘導している。


※:詳細はNRI主任研究員のリチャードクー氏の「バランスシート不況」が分かりやすい。NRIのHPから引用させていただく↓
http://www.nri.co.jp/souhatsu/person/inter_004_2.html


バランスシート不況」とは私が言い始めたことで、今までそういう考え方はありませんでした。
今までの経済学の基本は、企業は利益の最大化を目指して活動するということで、大学でもそう教えています。
しかし、この十数年間の日本や、最近のドイツやアメリカで見られる現象は利益の最大化ではなく、債務の最小化ですね。でも、債務の最小化を前提としたマクロ経済理論は、ミクロの理論もそうですが、ないんです。
そんなことあり得ないということになっているわけですから。
だからそこはゼロから作り始めたわけです。


なぜ債務の最小化があり得るかというと、だいたいバランスシート不況になる前には、大きな資産価格の下落があるんです。バブルの時は皆さん借金してでもどんどんものを買いましたが、バブルが崩壊すると借金を残したまま資産価格が下がり、多くの企業が債務超過のような状況になってしまうわけです。
でも本業がしっかりしていれば、本業のキャッシュフローで借金返済ができるんですね。
そういう行動を、個々の企業が取り始める。
キャッシュフローで痛んだバランスシートを修復しようとすることは正しいのですが、全員が同時に同じことをすると全く別のことが起きてくる。
これが「合成の誤謬」と呼ばれる現象で、どんどん景気が悪化してしまうんです。


一国の経済というのは、家計が貯金して、それを企業が借りて使うということで円滑に回るわけです。
その真ん中に証券会社とか銀行があって、仲介業務をするんですね。企業が一斉に借金返済にまわったら、家計の貯金はまったく使われない訳です。
そうすると企業の借金返済と家計の貯蓄を合わせた額が銀行に入ってきて、二度と出ていかないということになります。これがデフレギャップです。
少なく見積もっても35兆円から40兆円あります。
ということは、誰かがこれを使わないと経済はどんどんシュリンクしちゃうわけで、それを私はバランスシート不況と呼んだわけです。