knjrの日記

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庶民は知らないデフレの真実 角川SSC新書

森永氏は3億円の金融資産があるそうだ。3億円あれば「金持ち」である。その「金持ち」の立場から見た、デフレ維持の大切さ解説した本。デフレ以外にも様々な政策は、全て「金持ち」に有利な政策であることがよくわかる。

●金持ちに対して有利な政策

  • デフレ維持:金持ちの持っている資産が勝手に上がる。1%デフレになれば、3億円の資産であれば、300万円分価値が上がる。
  • 消費税増税:消費税には逆進性があるので、金持ちへの負担は軽い
  • 米軍の普天間基地辺野古移転:万が一でも米国を怒らせると、金持ちが積み重ねてきた財産や利権が吹っ飛ぶ
  • TPP:これも米国を怒らせないため。今の健康保険制度がなくなっても、金持ちは高額な医療費を払い順番待ちせずに最先端医療を受けられる


●金持ちの目標

  • インフレの芽を早期に摘んでデフレから脱却させない
  • 自分達に対する増税を防止する


構造改革という呪文

  • 庶民がこれらの仕掛けに気づいて反乱を起こさないように構造改革」と言う反乱封じの呪文を唱えている。「庶民の暮らしが苦しいのも、日本の財政赤字が増えたのも、低金利が続くのも、日本だけがデフレに陥るのも、国際競争力が落ちているのも、全てそれは構造改革が不足しているから」と言う言葉で丸め込み、庶民を納得した気分にさせる。だが構造改革とは庶民の生活を底上げする政策とは真逆の政策である


●金融緩和は効果がないというウソ

  • デフレの維持に最も重要なのは、「金融緩和は効果がない」という考えを庶民に植え付けること。「金融緩和をやりすぎるとハイパーインフレを招く」という脅し文句も付け加えれば完璧
  • でも実際には、日銀が通貨供給量を増やせば、かならず物価は上がるのである
  • 藻谷浩介氏の『デフレの正体』は、少子高齢化がデフレの原因としているが、本当はそうではない。しかしこの本のおかげで、多くの国民が「いまの日本がデフレになるあのは仕方がない」と考えてくれている。金持ちにとっては素晴らしい本だ。


●消費税は止むを得ないと思わせる

  • 日本の財政は破綻状態である⇒確かに借金はあるが、同時に世界最大規模の資産がある。2009年度時点で、金融資産が約501兆円、非金融資産が約469兆円ある。こんなことを国民が知ると、まだ借金ができると思ってしまう
  • 消費税以外の税収を得る手段がない⇒①金融資産税:1400兆円の個人資産に年1%課税すれば、14兆円入る。②法人税:現在30%であるが、これを以前の43.3%に引き上げれば4兆円入る。企業の海外進出理由のうち「税制の優遇」の回答は、たった10%ほど③相続税:2009年度の家計正味資産は約2039兆円。30年で入れ替わり、20%の課税を課せば、年約14兆円が入る。
  • 日本の消費税負担は国際的に見て低い⇒海外では日本と異なり、生活必需品に幅広い軽減税率やゼロ税率があるので、見た目ほど税率は高くない。