knjrの日記

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インフレどころか世界はこれからデフレで蘇る

  • 日本で平均年収の下落が始まったのは1998年、消費者物価指数が下落を始めるのが1999年。つまり国民所得が下がったのが「原因」となり、物価が下がりデフレとなる「結果」がもたらされた。デフレとは「原因」ではなく「結果」にすぎない
  • 2012年度の給与所得者全体の平均年収は408万円。業種別では製造業が472万円、建設業が430万円、宿泊・飲食サービス業が234万円。つまり宿泊・飲食サービス業は製造業や建設業に比べてかなり年収が低いという現実がある。1991年のバブル崩壊以降、経済のグローバル化により製造業の雇用が海外に流出した。1991年には1600万人台であった製造業の雇用者数は2012年には1000万人を割り込み、600万人以上の雇用が失われた。1998年まで国民の平均所得が下がらなかったのは、失われる製造業の雇用の受け皿として建設業が増えていたから(政府は当時は公共事業の拡大により景気や雇用を下支えしていた)。2000年代に入ると、日本の財政赤字の拡大懸念により、政府は公共工事の大盤振る舞いができなくなり、建設業の就労者も減っていった。新たにその受け皿となる小売業やサービス業は製造業や建設業と比較し年収が低いために、国全体の所得平均が下がることになった。
  • 日銀の量的緩和は銀行からの貸し出し額を増やすことで企業の活動が活発になり、国民所得が増加すると考えられている。しかしながら量的緩和を長く続ければ続けるほど、規模が大きくなればなるひど、国民の所得は下がり続けている。その理由は量的緩和により銀行の長期金利が低下し、収益力が低下してしまった。その結果、銀行は融資先の財務内容が健全な企業に絞りむようになった。収益力が高い時代であれば、100のうちの1つや2つの企業が倒産しても十分な利益を得られたが、長期金利が1.5%や1.0%では一つの企業が倒産するだけで、赤字に転落する可能性があり、融資先を絞り込まざるを得なくなった。そのしわ寄せが信用力や財務内容の劣る中小企業にむかうことになり、中小企業の経営が苦しくなる。
  • 国民にとって大事なことは、名目賃金の上昇ではなく、物価変動を加味して、実質賃金が上昇するかどうか。2013年6月から消費者物価指数が0.数%と上昇してきているが、これは円安により輸入物価(石油、石炭、ガス、食料品、飼料)の上昇による価格転嫁である。特にエネルギーと食料品価格の上昇が著しく、米国型のインフレになる兆候がでてきている。
  • じつは英国が産業革命で隆盛を極めた18世紀後半の100年間は、技術革命による供給能力の飛躍的な進展により、世界中にデフレをもたらした。名目賃金は下落傾向にあったが、それ以上に物価が下がったので、実質賃金が上がっていった。その恩恵をうけて、人々は労働一辺倒の生活ではなく、生活を楽しむ余裕が生まれた。英国で大衆相手のエンタテイメント産業が育ち、全盛期を迎えたのもこの時代であった。
  • 「デフレが悪い」という考えは誤り。インフレにも「良いインフレ」と「悪いインフレ」があるように、デフレにも「良いデフレ」と「悪いデフレ」がある。今の日本は、物価よりも所得の下落率が大きい「悪いデフレ」の状態であるが、米国や欧州の「悪いインフレ」よりは、国民の生活水準がかなり健全である。
  • 米国では過去30年にわたり、所得が伸び悩む中でインフレが進み、豊かな中間所得層が失われて、それが貧困層や貧困予備層に位置する低所得者を生み出した。経済成長で得た成果の大半が上位1%に集中する一方で、下位30%はインフレを考慮すると、ほとんど所得が増えないという悲惨な状況(米国の国勢調査によると、2011年時点で、貧困層は4970万人、すなわち米国民3億1千万人のうち、6人に1人が貧困層
  • 米国では株高やドル安により、富裕層が株式の配当や売却益などで大きな恩恵を受けている一方で、中小企業や一般庶民にはその恩恵やほとんどもたらされなかった。むしろ、金利低下や物価高による副作用が大きい。特にエネルギー価格の高騰により、ガソリン価格や食料品価格の高騰しているが、2012年の平均所得は1995年から伸びはない。米国でこれまでインフレであったのは、エネルギー価格の高騰によるものが主要因であった。2000年以降のエネルギー価格の値上がりは、低成長で本当はデフレでよいはずの先進国に「悪いインフレ」をもたらし、人々の生活水準の低下をもたらした
  • 米国のシェールガス革命は、英国の産業革命時と同じ構図になるだろう。技術革新でシェールガスが大量に採れるようになり、米国国内の天然ガスの価格が暴落する。米国、カナダがシェールガスを本格的に輸出するようになれば、天然ガスの価格が世界的に暴落し、玉突き的に原油と石炭価格も暴落し、多くのモノの価格の下落に連鎖、波及していき、産業構造を変えていく。つまり産業革命時と同じく、エネルギー革命によりデフレになっていくだろう。