knjrの日記

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亡国の農協改革 ――日本の食料安保の解体を許すな

亡国の農協改革

亡国の農協改革

  • 「国民が豊かに、安全に暮らしていくための政治」を実現するための基盤である安全保障には、主に防衛安全保障(国土を外国から守る)、防災安全保障(国民を大規模事前災害から守る)、防犯安全保障(国民を犯罪から守る)、食料安全保障(国民を飢えから守る)、エネルギー安全保障(国民に安定的にエネルギーを供給する)、医療安全保障(国民に高品質で安価な医療サービスを提供する)、物流安全保障(非常時でも物資の流通を実現する)がある。
    これらの安全保障関連の供給能力を外国に保有されることは、亡国に繋がる。規制緩和グローバル化と安全保障の強化は両立しえない。日本だけでなく世界的にグローバルなビジネスがあまりにも礼賛され、次第に各国の安全保障分野が浸食される=国民の安全保障が強奪されているっている現実がある。
  • 食料安全保障とは、国民を飢えることがないように、食料の生産、流通、小売りに至るセキュリティチェーンをコントロールすること。安全保障の中でも、食料安全保障は、国民の生命に直接関わっているため、セキュリティチェーンを抑えた者は、その国の殺生与奪の権利を獲得したのもの同然である。
    米国もそのことを十分に理解しており、ブッシュ大統領が国内の農業関係者向けの演説で、しばしば「食料自給は国家安全保障の問題であり、それが常に保証されているアメリカは有り難い。食料自給できない国を想像できるか、それは国際的圧力と危険にさらされている国だ」と演説していた。
  • 米国は第二次大戦後、自国の過剰農産物を外構の道具として上手く使い、農産物を米国から各国に供給することで相手の自国(米国)への依存を深め、安全保障を確立するプランを始めた。最大の標的市場は日本であり、1954年にMSA(相互防衛援助協定)が結ばれたのち、米食ではなく、パン食のライフスタイルを広める「栄養改善運動」が開始された。この運動の表向きは厚生省が主導であったが、実は資金の出所は米国であり、結果としてこの「栄養改善運動」は日本の食料安全保障における米国の影響力拡大に貢献した(当時の農林省には、米国の片棒を担ぐとして反発があったが、食料事情を何とかしたいという河野一郎農相が反対する官僚たちの抵抗を抑えたとされる)。
  • 日本の農業所得に対する財政負担の割合は、わずか15.6%。米国では全体で26.4%、穀物農家に対しては50%前後、フランスでは95.2%、イギリスでは94.5%、スイスでは94.5%と信じがたいほど高水準になっている。欧州での財政負担の割合が高い理由は、外国との競争に敗れて食料安全保障の崩壊を防止するため(農業が廃業すると、国境に人が居住しなくなり、他国の侵略を招く可能性がある)。そのことを国民も意識しているため是認している。日本ほど農業を保護していない主要国は他に存在しないにも関わらず、なぜか「日本の農業は保護されている」というレトリックが出てくる。日本政府は付加価値を高めて、世界で勝手に競争しろと、政治の責任を完全に放棄している。
  • 農協(総合JA)は農産物の販売や生産資材、配合飼料の購買などを行う「経済事業」、組合員から集めた預金を農家に貸し出す「信用事業」、農家に保険を提供する「共済事業」、効率的な農業生産を支援する「営農指導」など、農家が必要な全ての事業を行っている。農協は経済事業の赤字を信用事業や共済事業の黒字でカバーし、なんとか帳尻を合わせて、日本の農業を支えている(国民に安価で良質な農産物を安定的に供給できている)のが現実。経済事業、信用事業、共済事業を切り離すことは、農産物の高騰を招く=日本の消費者が不利益を被る。
  • 米国のグローバル資本アメリカ商工会議所を通し、JA共済農林中金の市場に米国の金融機関が新規参入したいのであるが、農協法の壁に阻まれて参入できない。だから規制緩和JA共済農林中金を一般の金融機関と同じ立場とし、米国の金融機関が参入しやすいようにしろと命令している。その理由は単純で、JA共済農林中金の規模が大きい、すなわち利益が見込める美味しい市場であるから。日本の規制改革会議は現状では、アメリカ商工会議所の飼い犬になっている、決して飼い主に逆らわない。
  • 警察や自衛隊が不祥事や事故を起こしても、警察や自衛隊には治安安全保障や防衛安全保障を担っていることを国民は理解しているので「警察や自衛隊を解体しろ」という議論にはならない。農協も耕作放棄地の問題などはあるが、食料安全保障の面で必要不可欠な存在であるので、問題があるからといって「農協を解体しろ」というのは幼稚な自殺行為である。
  • 2014年に国家公務員の官僚の人事権を内閣官房が握ったことにより、一部の農水省の官僚たちが、官邸が推進する農協改革やTPPの実現に血眼になっている。国会議員も小選挙区制により、政党中枢部から公認をもらうために、政党が推進する農業改革に口をつぐんでいる。