knjrの日記

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フランスはどう少子化を克服したか

フランスはどう少子化を克服したか (新潮新書)

フランスはどう少子化を克服したか (新潮新書)

  • フランスでは父親に3日間の出産有給休暇があり、その期間で助産師により沐浴やおむつ替えなど、父親になるトレーニングが行われる。その後11日間連続の「子供の受入れおよび父親休暇」もあり、そこで赤ちゃんと向き合うことができる。これらの連続休暇は労働法と社会保険制度法に定められ、雇用主が拒むことはできない
  • 父親に対する休暇制度が整備された理由は、核家族化に加えて経済的な理由がある。第二次体制後に女性の社会進出が進むと出生率が下がり、1993年にはついに1.66まで落ちこんだ。それを受けてフランス政府は、それまでの子持ち家庭向けの補助金の充実をから、子育てのサポートや父親の家庭参加の方針を明確化する方向に転換し、その目玉が2002年に始まった父親の産休制度。その結果、2010年には出生率が2.00を超えることができた
  • フランスでは無痛分娩が大多数(2010年で81%)。選択は妊婦に任されているが、麻酔費用は全額、国の医療保険の負担となっている。麻酔医の数が増えているだけでなく、麻酔看護師という看護専門職が麻酔医をサポートする体制も整っている
  • フランスの保育園の考え方の基本は「子供が健やかに発育するところ」であると同時に「保護者の負担を軽減すること」。そのため求められる保護者参加は必要最小限である。例えば毎日の持物は最小限(エプロン、おむつ、シーツなども園で用意)、着替えも汚れてしまったときだけ、保護者会もなし、連絡帳もなし。その理由は、保育園の設立理念が保護者が働くことを支援するために作られた施設である以上、そこで負担を増やすのは本末転倒、という論理がある。そのため保育士についても、日本のような過重労働にはなっていない
  • フランスの3歳未満の保育園定員数は約16%と絶対数が圧倒的に少ないために、日本と同様に「保活」に労力が必要な状況になっている。ただし保育園に落ちた場合でも、保育園以外の保育手段が充実している。その代表格が「母親アシスタント(=日本でいう保育ママさん)」や「共同ベビーシッター」。そのため保育園に落ちても、日本ほどの悲壮感や焦燥感を感じないようになっている
  • 2009〜2013年に保育園の枠が年間1万ずつ増加しているが、増加の立役者は民間。その中でも代表的なバビルーグループは民間企業の人事部を顧客とし、保育園枠を従業者用福利厚生のオプションとして販売するビジネスモデルを開発し、顧客数を急激に増やしている。保育園枠は1枠から契約でき、契約企業先の従業員は、320の直営保育園と1000以上の提携保育園の中から、最も近くの保育園を選択することができる。
  • フランスには3〜5歳では「保育学校」の制度があり、誰でも通える無償の学校で、ほぼ全員が通っている。教育方針も国家教育省が定め、小学校とおなじ初等教育の位置付けをしており、教員も国家教育免状の持ち主。よってフランスには3歳以上の待機児童は存在しない。入学条件は年齢とおむつが取れていることだけ。保育学校の目的は、子供たちに学校という場所を知り、そこへ行く楽しさを知る、そのために子供たちの幼さを容認し、年齢と発達に見合った扱いをするようになっている。