knjrの日記

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人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊

  • 米国では一人当たりのGDPは上昇しているのにも拘わらず、所得の中央値は下落している。一般的な労働者は貧しくなり、金持ちはより豊かになっている。背景には情報技術に代替されやすいスキルを持った労働者(=事務労働)の需要は減少し、失業した事務労働者は、より低賃金の肉体労働や高賃金の頭脳労働に移動する。(以下イメージ図)

  • 2045年までに起きると予想されているシンギュラリティのポイントは以下の4点に集約できる。①AIが人間の知性を超える。②AIが自らAIを生み出すことによって知能爆発が起きる。③AIが人間に代わって世界の覇権を握る。④人間がコンピュータと融合することによってポストヒューマンになる。学者によって①〜④を悲観論、楽観論いろいろあるが、①については、知性の“多くの”分野で人間を超えることはあるが、“全てを”超えることはないのではないか
  • 「大部分の知性」と「すべての知性」とは天と地の開きがあるが、その理由は「生命の壁」が立ちはだかっているから。AIが生きた生命である人間の知性ではないことから生じるディスアドバンテージが存在する。
  • AIは既に世の中で人気を博している曲と似たような曲は売れるだろうと推測したり、過去にヒットした音楽の傾向とSNSからかき集めた心情の傾向を掛け合わせて、これからヒットしそうな曲を予想して作ることが出来るが、新しく思い浮かんだメロディが人間にとって心地良いかどうかを自分の脳に問い合わせながら作曲することはできない。これは音楽だけでなく、小説や、映画、芸術作品に当てはまる。ただし俳句や写真、コラージュ・アートのような複雑な構造を作為する必要のない分野ではその限りではない。
  • 「生命の壁」の最も分かり易い例は、AIが人間のような身体を持ち合わせていないがゆえに「身体知」を持ちえないこと。「身体知」とは、泳ぎ方、バットの振り方、バイオリンの弾き方のような、言葉では明示しずらい無数の身体感覚に基づいた知識のこと。例えばバットの振り方を教えるコーチについては、ロボットは人間と同じ身体を持っていないので、人間がバットを振っているときの身体感覚を自ら知ることができない。ロボットでもマニュアルに従って振り方を人間にコーチすることは可能であるが、マニュアルそのものを作り出すことはできない。また自分の身体に問い合わせることができないので、マニュアル外のきめ細かなコーチングも難しい。ロボットは一遍のコーチを務めることはできても、名コーチにはなれない
  • 過去、歴史を振り返ると、汎用的目的技術(General Purpose Technology)を活用して、いち早く生産活動の変革に成功した国がヘゲモニー国家(覇権国家)になっているし、これから(=第4次)もそうであろう

   第一次:蒸気機関:イギリス
   第二次:内燃機関、電気モーター:アメリカ(ドイツ)
   第三次:コンピュータ、インターネット:アメリ
   第四次:IoT、3Dプリンタ、AI、汎用AI:アメリカ、中国、ドイツ、日本?

  • いまのところ汎用AIが第四次産業革命におけるGPTの最有力候補。汎用AIが2030年頃に実現すれば、その時から急速に人間の労働需要は減少していくと考えられる。汎用AIの一番手はパーソナルアシスタント。イメージ的にはSiriが今より遥かに賢くなって、なんでも要望に応えてくれるようなの(飛行機の予約、資料や報告書の作成などの事務作業)。その次には汎用AIが汎用ロボットの頭脳に搭載され、様々な人間的な作業を成し遂げるロボットになるであろう
  • 汎用AIにも仕事を奪われにくい職種は、以下の3つではないか。①クリエイティビティ系(想像性)②マネージメント系(経営・管理)③ホスピタリティ系(もてなし)。これらの仕事をするには、人間との通有性を必要とする。ただしこれらの3分野の職業でも全く機械に労働を奪われるに済むということではない。例えばホスピタリティの分野でも機械は人間を追い上げてくるので、単純なホスピタリティしか持ち合わせていないのであれば機械に負ける人間は出てくるであろう。
  • このように機械が人間の雇用を順調に奪っていくと、2045年には全人口の1割ほどしか労働していない社会になっている可能性がある総務省統計局の労働者調査によれば、①クリエイティビティ系②マネージメント系③ホスピタリティ系に位置付けることことができる「管理的職業」「専門的技術的職業」(研究者や教育者、医者など)「サービス職業従事者」(介護、調理、接客・給仕など)の合計は約2000万人。うち半分が汎用AIにより必要が無くなる可能性があると想定すると、(日本国内で)約1000万人くらいしか労働者が必要とさなくなってしまう可能性がある。これは2030年頃に汎用AIが実現するという前提の未来の1シナリオにしか過ぎない。AI技術の発展スピードや経済政策次第では、もっと多くの人がまともに労働している経済になっている可能性もある。
  • 第四次産業革命では、生産活動が「純粋」に機械化され(=純粋機械化経済)、図のように労働が必要なくなり、AIがロボットなどの機械のみが直接的な生産活動を担うようになる。機械が「生産の手段」から「生産の主力」に成り代わる。ただし新しい技術の研究や新商品の開発するようなクリエイティブな仕事には人間は携わっていくだろう。これは2030年ころから進展し、2050年頃には、およそ純粋機械化経済を作り上げているものと思われる

  • 機械化経済では長期的には2%程度での経済成長に落ち着いているが、純粋機械化経済では、年々どこまでも上昇していくという事態が想定される。その理由は、機械化経済では労働がインプットの一つになっており、そこがボトルネックになっているから。純粋機械化経済では、ボトルネックになっている労働を捨て去ることにより、爆発的な成長が可能になる。純粋機械化経済の出現は、人類が経験したことのない未曽有の事態であり、第一次産業革命以来の経済構図の大きな変動と言うことができる。汎用AIをいち早く導入した国が経済面で圧倒的になり、導入が遅れた国々を大きく引き離すことになる。19世紀に蒸気機関を導入した欧米諸国が上昇路線に乗り、そうでないアフリカやアジアの国々が停滞路線に取り残され、従属され食い物にされた。汎用AIは、世界を19世紀と同じ構図に導く可能性を持っている。