knjrの日記

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生まれが9割の世界をどう生きるか 遺伝と環境による不平等な現実を生き抜く処方箋

 

 

 

  • 遺伝率の身長や体重は90数%、神経質さや外向性、勤勉性、新奇性などのパーソナリティでは50%程度、統合失調症自閉症ADHDについては80%、知能については50~60%など、ほとんどの形質は30~70%程度であることが、双生児法による研究から明らかになってきている。それ以外の形質につていも40~60%程度は遺伝の影響がある。すなわち遺伝と環境の影響は半々とデフォルトで考えおく必要があるということ。
  • 知能や学力について、例えば両親ともに平均値よりずっと高かった場合、子供の平均は両親の中間より集団全体の平均に近づく確率が高くなる。これは逆もしかり

  • 人間のもつ形質は遺伝的な影響を強く受けているが、完全に固定されているわけではなく、一定範囲内で確率的に生じる(その揺らぎを数値にしたのがセットポイント)。
  • 脳は予測器。まだこれは仮設の域をでていないが、生まれつきの脳の配線やモデルにより、「自分にはこれができそう・できなさそう」という予測を生み、その予測を検証すつために行動する。その繰り返しが能力の発現へとつながると思われている。
  • 何かをやりぬく能力の遺伝率は37%と普通のパーソナリティの遺伝率と同程度で、非共有環境(生後の生活環境など)の影響はなく、学力との相関もごくわずかで、その相関を生んでいるのは遺伝の影響が大きい。
  • 経済的状況が高いと、さまざまな能力についての遺伝率が上がる傾向がある。これはお金などの制約などの環境的な圧力が低くなることにより、その人が持っていた遺伝的素質がでやるくなると言える
  • 人間の能力がどのように遺伝するかという優生学という学問がある。戦前には「人間の能力はほとんど遺伝にようって受け継がれると考え、人為的な選択によって品種改良すれば、よりより社会を築ける」という危うい主張がはびこり、ナチス・ドイツの大虐殺を生んでしまった。戦後、この反省から遺伝研究学自体も学問的なタブーとして扱われた。
  • 「知能が遺伝する」と言いうと世間的な反発が大きいから「知能は遺伝しないこととする」のも、価値命題から事実命題を導くという「逆自然主義的誤謬」とも呼ぶべき非科学的な態度で、アカデミズムとして不誠実であるばかりでなく、子どもには無意味で不必要な圧力をかけることになる。教育機会を与えて本人が頑張りさえすれば勉強はできるようなるのに本人が悪い、そういう理論がまかり通っている。
  • 優生学は否定されたが、同時に心理的形質の遺伝がタブーになったことで、逆に「優生学的現実」、すなわち遺伝的に優秀な人が有利に生きられるような社会はそのまま残ってしまった。