円高の理由を分かり易く説明してくれている。岩田規久男先生や高橋洋一氏などと同様に、「円高とデフレは深い繋がりがある」という理論である。
- 作者: 安達誠司
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2012/01/17
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本書で重要なのは第4章である。その内容とは、ずばり
「為替レートは、2国間における”将来の物価についての予想の格差”の変動によって動かされている」
ここで重要なのは、「将来についての予想」という部分である。
日本の例にとれば...
- 日本銀行が、断固たる意志をもって、景気を良くしようと、積極的に金融緩和をしてマネタリーベースを増やす
- この時、投資家は、日本が将来のインフレ率の上昇に向かうだろうと予想する
- こうして日本の予想インフレ率(物価変動の予想値)が上昇する一方、アメリカで予想インフレ率の変動が起こっていなければ、相対的に日本の予想インフレ率のほうがアメリカの予想インフレ率よりも高くなるため、実際の為替レートも円安になる。
だが、実際には日銀の過去の量的緩和でも、十分な円安を起こせなかった。その理由は、日銀が消極的でかつ、嫌々という感じで、量的緩和を小規模に行ったため、市場は「日銀が、将来インフレが起こるまで量的緩和を行うつもりはないだろう」と予想した。つまり「2」の予想インフレ率の十分な上昇を起こせなかったからである。
この理論で考えれば、先日からの円安の理由も、日銀が1%とはいえ、実質的なインフレターゲットをしたことで、市場が少しはインフレ率の上昇を予測したということで説明できる。
また本書の最後では、本日記でも以前に紹介した、藻谷浩介氏の「デフレの正体」での「生産年齢人口の減少がデフレの正体」という主張の反論検証もしている。これについては、高橋洋一氏の「現代ビジネス:白川日銀「量的緩和」はどれほど効果があるのか」でも説明されている通りである。「世界各国の人口増加率とインフレ率」の表を引用させてもらった↓
これを見れば一目瞭然で、人口増加率とインフレ率には相関関係はないことがよくわかる。
つまり、「デフレの正体」で主張している「生産年齢人口の減少がデフレの正体」という説は正しくないのである。
藻谷氏をフォローしておくと、藻谷氏は、「デフレ」と「不況」を混同しているのであって、藻谷氏の説は実は「生産年齢人口の減少」は、モノが売れないという「不況の正体」であるのであり、物価下落が継続的となる「デフレの正体」ではないのである。
最後に、「円高とデフレ」の関係については、岩田先生の
- 作者: 岩田規久男
- 出版社/メーカー: 講談社
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円高の流れになる理由が知りたい人にはお勧めの一冊。