knjrの日記

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EUメルトダウン 欧州発 世界がなくなる日

今回のギリシャ危機は、金融機関による債権放棄で、表面上はひとまず収束したように見える。そんな折に、12月に出版された浜先生の著書を読んでみた。自分にとってのポイントだけ↓

EUメルトダウン 欧州発 世界がなくなる日

EUメルトダウン 欧州発 世界がなくなる日

  • EU発足前、ECの時代にはEMS(欧州通貨制度)というものがあり、EMSの為替相場カニズムをERMと呼んでいた。1992年に投機筋によりポンドが売られERMを脱退させられ、そのあおりでイタリアもERMを脱退。ERMに留まった相対的に弱い通貨が次々と投機の波に飲み込まれていった(アイルランド・ポンド、スペイン・ペセタ、ポルトガルエスクード)。ギリシャに関しては、当時はERMが求める通貨秩序にも加われない状態であった。要するに、ヨーロッパの豚さん国家群(PIIGS)は、実はユーロ発足以前においても、豚さん国家群であり、ヨーロッパが現在直面している問題は今に始まったものではない。
  • 固定為替相場制度と単一通貨制度の間には、ほとんど水と油のような差がある。固定為替相場制度は、その基軸通貨以外の国々に、お行儀よくするこを強いるシステムである。それに対して、単一通貨制度は、その中に相対的に緊張感が欠如したグループのただ乗りを許してしまう仕組みである。格差が広がるのは当たり前である。体質改善を強く求められる事もない。一方で自国通貨の安さを梃に輸出を伸ばして成長力をつけることも出来ない。サボる誘惑は大きく、強くなるための足掛りは与えられない。こうなってくれば、弱いものはますます弱くなり、弱きものを救済するための強きものの負担はますますおおきくなっていく。
  • EU発足前は、通貨を統一してしまうことで、強制的に国々の経済実態を収斂・平準化の方向にに誘導し、物価や金利もおのずと一定水準に収斂していくだろうという発想であった。ところが実際には、経済資源は収益機会や成長機会が高いところに移動するため、域内格差は広がってしまった。


本書を読む限り、やはり単一通貨制度は、かなり無理な仕組みであるよく理解できる。崩壊するのか、危機が発生する度に債権放棄なり、ドイツが仕方なく支援するということの繰り返しになるのか。いずれかであろう。