knjrの日記

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人はなぜ集団になると怠けるのか - 「社会的手抜き」の心理学

社会生活の中で、グループ行動になった途端にパフォーマンスが下がると感じることはないだろうか?その謎が本書で解明されている(社会的手抜き=人間、生物の遺伝子に刷り込まれた行動である)。チームスポーツのトップアスリートでは「手抜き」が行われないようにトレーニングされており、実際に「手抜き」が発生しにくいという点も面白い。

  • 人は他の人と一緒に作業していると思っただけで、無意識に手抜きをしていまうその理由は「道具性の欠如:自分が頑張っても、それが集団全体の業績にあまり影響しないと思うこと」、「努力の不要性の認識:他の人しっかり仕事をしえいるので自分が頑張る必要が無いと感じること」、「評価可能性の欠如の認識:たとえ頑張ってもそれが他の人にはわからないので評価されないと思うこと」
  • 実際に手抜きについての検証実験を行うと、個人単独のパフォーマンス量を100とすると、他人が1人いると思うと82、5人いると思うと74にまで低下する。これをリゲルマン効果。という
  • 集団サイズと手抜き時のパフォーマンス量の関係は、受容者に影響を与える人(監督者、上司、視聴者)の強度、(地位や社会的勢力等)、受容者と供与者の空間的、時間的な接近度、供与者の数の3要素を掛け合わせたものになる。これが社会的インパクト理論。強度、近接度、供与者がそれぞれ大きければ大きいほど、受容者の受ける影響は強くなる。
  • 社会的手抜きは人の性格特性にも関係する。勤勉性が高い人や、協調性が高い人は手抜きが起きにくい。
  • 子供に対して実験を行うと、3歳児では社会的手抜きが見られなかったのに対して、4,5歳児では集団条件で20%以上のパフォーマンス低下が見られ、大人同様の手抜きが観察される。この実験から、社会的手抜きが社会的知性の発達と密接に関係していることがわかる。
  • 社会的手抜きのための対策例としては、「手抜きに罰を与えるのではなく、集団へ目標を与え達成できた場合の報酬を与えるなど、ポジ手ティブな側面に力を注ぐ」、「社会的手抜きをしない人物を選考する」、「リーダーシップにより集団や仕事に対する魅了の向上を図る(部下にビジョンを提示する、部下に集団の目標を掲げ努力すれば目標が達成できることをアピールする、部下の創造性を刺激し高める、部下のに関心を示し相談相手になる)」「パフォーマンスのフィードバックをする(努力の可視化により、作業者の自己効力感を高め、動機づけが維持される)」など