- 作者: 池田信夫
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2011/09/29
- メディア: 単行本
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本書の内容については、池田氏本人の紹介から一部引用
http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51743471.html
「イノベーションの何とか」と題したビジネス書はたくさん出ているが、そのほとんどは過去の成功事例を列挙して結果論を述べたものだ。たとえば「スティーブ・ジョブズは大好きなことをしたからイノベーションを実現した」という事実が正しいとしても、そこから「大好きなことをすれば常にイノベーションが実現できる」という法則は導けない。成功事例を事後的に説明することは容易だが、理論なしにデータをいくら集積しても、どうすれば成功するかは事前にわからないのだ。
他方、経済学にはイノベーションについての理論がまったくない。最近は少し出てきているが、その多くは「イノベーションが経済成長にもっとも重要だ」という事実を証明するもので、どうすればイノベーションが生まれるかにはほとんどふれていない。それは当然で、伝統的な経済学では企業がどうやって利潤を最大化するかは市場の外の問題で、経済学の対象ではないからだ。
このため、イノベーションは経営学では非常に多く言及されながら理論は無に等しく、経済学では対象外にされたエアポケットのような状態にある。しかしイノベーションが成長にとってもっとも重要だとすれば、その法則を理論的に分析することは経営者だけではなく政策担当者にとっても必要だろう。本書の柱となる仮説を最初に列挙すると、以下のようなものだ。
- 技術革新はイノベーションの必要条件ではない:すぐれた技術がだめな経営で成功することはまずないが、平凡な技術がすぐれた経営で成功することは多い。重要なのは技術ではなくビジネスモデルである。
- イノベーションは新しいフレーミングである:マーケティングで顧客の要望を聞いても、イノベーションは生まれない。重要なのは仮説を立て、市場の見方(フレーミング)を変えることである。
- どうすればイノベーションに成功するかはわからないが、失敗には法則性がある:大企業が、役員の合意でイノベーションを生み出すことはできないし、特許のノルマでイノベーションが生まれることもない。
- 「ものづくり」にこだわる限り、イノベーションは生まれない:特に情報産業の中心はソフトウェアであり、それは同じ製品を大量生産するものづくりではなく、すぐれた作品をひとつだけつくるアートだから、要求されるスキルが製造業とはまったく違う。
- イノベーションは突然変異である:プラットフォーム競争は論理による説得ではなく多数派工作だから、よいものを安くつくれば競争に勝つとは限らない。むしろ新しい突然変異が生き残るような環境をつくることが重要だ。
- イノベーションにはオーナー企業が有利である:事業部制のような複合型組織は、規模の経済の大きい製造業では有効だが、ソフトウェアを中心とする情報産業ではオーナー企業が有利である。
- 知的財産権の強化はイノベーションを阻害する:特許や著作権がイノベーションに与える影響は、中立かマイナスという実証研究が多い。いま以上の権利強化は法務コストを増加させ、イノベーションを窒息させる。
- 銀行の融資によってイノベーションは生まれない:ハイリスクの事業を行なうには、株式などのエクイティによって資金調達する必要がある。銀行の融資や個人保証は危険である。
- 政府がイノベーションを生み出すことはできないが、阻害する効果は大きい:政府はターゲティング政策からは手を引き、インフラ輸出などの重商主義的な政策もやめるべきだ。
- 過剰なコンセンサスを断ち切ることが重要だ:イノベーションを高めるには、組織のガバナンスを改める必要がある。特に日本的コンセンサスを脱却し、突然変異を生み出すために、資本市場を利用して組織を再編することが役に立つ。
本書では、上記の仮説に対する事例も数多く取り上げられている。日本企業がイノベーションを生み出せなくなったの理由もよく分かる。
また本書の内容は、SBI大学院大学/『イノベーションの経済学』の内容を纏めたもののようです
全7時間だそうです。興味のある方はどうぞ!