knjrの日記

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電車をデザインする仕事 「ななつ星in九州」のデザイナー水戸岡鋭治の流儀

JR九州の中心とした数多くの鉄道車両のデザインを手がけ、最近も超豪華列車の「ななつ星」も担当した水戸岡氏の著書。デザインへの想い、あるべき論が強く伝わってくる。その考え方はデザインだけでなく、他の仕事でも当てはまることも多い。

  • 公共のもの、つまりみんなのためのデザインとは、一企業や一デザイナーのためにあるものではなく、さらに経済性や効率性だけを優先してつくるものではない。利用する人に喜んでもらえるかどうかを考え、最後までそれを徹底してカタチにする。そこに独創性が生まれることで結果として採算性が生まれ、企業も人も成長していく
  • 本来、大人のすべき最大の仕事は子供に感動を与える事である。だからこそデザイナーの仕事とは、子供に感動を与えるような空間を生み出すこと。それがやがて日本人の個々のおける五感が磨かれていくことにもなる。大人が手間隙かけた最高レベルのものを本気でつくれば、子供達は必ず何かを感じるはず
  • デザイナーの仕事は、イラストレータやアーティストのように1人で全てを行うものではなく、いろいろな人と話し合い、完成イメージを共有し、作業を作成者に委ねる必要がある。つまりデザインとはいわば「代行業」である。
  • デザイナーはただデザインだけをやっていればよいだけではなく、しっかりとした作法を見につけ相手の気持ちを理解できるようになれば、尊敬と信頼が生まれる。その尊敬と信頼こそがデザイナーの五感と脳を動かすエンジンとなり、価値観の共有によって斬新で正しいアイディアを生み出す。
  • デザイナーの仕事における重要な三つの要素とは「比較しない」「不都合を受け入れる」「対立構造をつくらない」。比較すると自分の得意技が出せなくなるだけでなく、自分の軸や志向がずれてデザインが散漫になる。不都合を受け入れる事で、人間の能力は伸びていく。日本人は無意味な競争をさけ、お互いを理解し、最適な答えを見つけ出すために話し合いをすることができる
  • 世の中には数多くの「デザイン」が存在しているが、現実問題として総合的かつ創造的な正しいデザインと呼べる仕事は、ほんの一握り。単純に説明すると、現在のデザインはモノを売る手段としてとらえらえ「いかに売るために、いかにデザインするか」という考えのもとでデザインが組み立てられるのが主流である。しかし。そのような商業至上主義の考え方だけでな、総合的かつ創造的なデザインに到達する事はできない。総合的なデザインとは、「いかに売るか」ではなく、「いかに長く使うことできるか」ということを考えなければ、そのデザインは短命で終わってしまい、結果としてビジネスにおいても利益に結びつける事ができない。
  • 水戸岡氏が手がける車両デザインはお金をかけていると思われているが、実は一般的な車両と同じ予算とスケジュールで行っている。それができるのは想いや情熱の違い。一般的には鉄道会社は車両メーカーに丸投げにするのであるが、水戸岡氏は車両のパーツ毎に細かくメーカーを選定し、それぞれの得意技を発揮するために単体発注することで製品のコストと時間を大幅に削減し、さらにクオリティの高いパーツを集めて一つの車両に仕上げている。