本書の中から、中東情勢のについて佐藤氏の見解をメモ書き
- 作者: 佐藤優,宮崎学
- 出版社/メーカー: 祥伝社
- 発売日: 2015/09/19
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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- アメリカとイランの関係:アメリカはイスラム国を殲滅するためには地上戦が必要だとみているが、米軍を投入すれば大量のアメリカ兵が死ぬしコストがかかる。そこでイスラム国ととの地上戦を代わりにやっていくれるイランに目をつけ、イランとの核合意をし、経済制裁解除を行った。イランは核兵器に必要な中距離ミサイルは北朝鮮からの技術で既に持っており、核濃縮技術と小型化技術をあと2年で本格的な核を持つことになるだろう。背景には、イランの前大統領のアフマディネジャドは終末思想を持っており核を使うリスクが高かったが、アメリカは今のイランのトップ(ハメネイ宗教最高指導者、ロウハニ大統領)は合理的に考えるので、イスラエルを核兵器を恫喝の手段として使うだろうが、撃ち込むことはないとみているから。
- 今後の中東情勢:イスラエルが懸念しているのは、イランの核開発だけでない。イランの経済制裁解除により石油や天然ガスが輸出されると、イランは得た資金で「シーア派イスラム革命」の輸出をする。具体的には、レバノンのヒズボラ、シリアのアサド政権、イエメンのフシ派などのシーア派への軍事支援を強化することになり、中東情勢は一層不安定になる
- イランが核兵器を持つと・・・:パキスタンは貧困国であるが、核兵器やミサイルの開発ができるのは、実はサウジアラビアが全部お金を出したから(サウジアラビア・パキスタン秘密協定)。つまりパキスタンの核兵器のオーナーはサウジアラビア(このことは表立っていないが、世界のインテリジェンスや軍事専門家は、それを前提に情勢を分析している)。イランが核兵器を保有することが確認されたら、可及的速やかにパキスタン領内の核弾頭のいくつかをサウジアラビアに移すだろう。アメリカもサウジアラビアが中東の大きなパートナーなので、それを黙認するだろう。いったんパキスタンからサウジアラビアに核が移転すると、カタール、UAE、オマーンといったアラブ諸国がパキスタンから金で核兵器を買うことになり、そうなるとエジプトやヨルダンは自力で核開発し、NPT体制は崩れることになる。最悪のシナリオは、イスラム国の核保有。サウジアラビアの国家体制は必ずしも盤石ではない。体制が緩めば、イスラム国がサウジを統治する可能性もある。その時にサウジアラビアが核兵器を持っていれば、イスラム国の手に核兵器が入るかもしれない。
- イスラム国の今後:イスラム国は現在は世界各地でテロをやろうとしているが、そのテロ活動の広がりに限界があるとなったら、今の領域で事実上の国家をつくる。国連には加盟せず、なんとなく国家のような安定した感じを維持しながら、チャンスがあれば世界各地でテロを行う。こうなる可能性が高い(=「イスラム国のソ連化」。ソ連は元々は世界革命を唱えていたが、ロシア以外での革命はうまくいかず、一国社会主義建設へ軌道修正を余儀なくされた)