knjrの日記

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負けかたの極意

野村監督が逝った。ここ数年のテレビに出演されているお姿や、出版ペースの速さ(自らの考えを亡くなる前に若い世代に伝授しようとしている?)から、それほど長くはないのではと心配していたが、とうとうその時がきてしまった。

野村監督の書籍は本ブログでも何度かは紹介している。プロ野球の事例を交えて、ビジネスでも役に立つ事柄を分かり易く説明されており、新しい書籍が発売されると目は通していた。そんな中で自分にとって最もインパクトのあった本の読書メモ。

負けかたの極意

負けかたの極意

  • 作者:野村 克也
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/05/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 
  • ノムさんの解釈する「敗北力とは」
    つねに最悪の状況を想定し、そういう事態におちいらないためにどうするか、さらにそうなったときにどうするかという「そなえ」----ただ漠然と毎日を過ごすのではなく、あらかじめ感じ(予感)、あらかじめ想い(予想)、あらかじめ測り(予想)、あらかじめ防ぐ(予防)という姿勢----を怠らない心構えを持つと同時に、負けや失敗から学び、それを勝ちや成功につなげる力
  • ほとんどの人の人生は負けることのほうがずっと多いはず。負けた時に「自分はダメだ」と切望したり、「おれの力はこんなものだ」とやる気を失ったりすれば、あとは負け続けるだけ、いつまでたっても勝つことなどできやしないだろう。とすれば、そのときの負けを受け入れ、自分の中で消化し、どうやって次の勝ちにつなげるか、力強く生きていくための糧とするかいうことが、われわれ人生を通して問われ続けているといえるのではなかろうか。
  • 人間という生き物は、成功からはあまり学ぼうとしないのではないか。成功したとき、勝ったときはたしかに気分はいいが、それだけに成功した、勝ったという事実に酔ってしまい、内容を検討するまでにいたらないのである。
  • 長所だけ伸ばそうとしても、絶対にプラスにならない。むしろマイナスになりかねない。まずはおのれの短所と弱点を知る。そして、それを克服する。そうすることで長所も活きてくるのである。
  • 成功することで人間には自信が芽生える。ただ自信はともすれば過信やうぬぼれに変わる。しかもうまくいっているとき、調子にのっているときは、自分が過信していること、うぬぼれていることに気が付かない。あるいは気づいていても「このままで大丈夫だ」と高をくくる。
    しかし過信し、うぬぼれた時点で成長はとまる。過信とうぬぼれは、成長への足かせなのだ。それ以上の思考をしなくなるし、努力もしなくなるからである。そしてそうした姿勢が驕りを生む
    となれば待っているのは強烈なしっぺ返しである。
  • 人間は失敗しなければ、負けなければ、なかなか反省しようとする気にならないし、どうにもならない状況に追い込まれなければ、短所や弱点と向き合おうとしない。
    失敗し、負けたからこを「自分のやりかたはおかしいのではいか」と疑問を抱き、正そうと考える。
  • 野村再生工場について)敗者が持っている悔しさ、反骨心を引き出すとともに自分の長所に気付かせる。次に、その長所を活かす方法と場所を与え、自信をもたせてやる----これが再生でもっとも大切なことである。
  • 監督の最大の仕事のひとつは、危機管理である。これはプロ野球の監督だけでなく、すべてのリーダーにいえること。すなわち、最悪の事態を想定したうえで、どういう状況、条件が揃ったらそういう事態に陥るのか、きちんと把握・認識し、そこにいたらないような対策を用意し、そなえておくこと----リーダーにはそれが必要不可欠なのである。そうしたそなえを怠ると、際限なく負け続けることになりかねないし、それに歯止めをかけることも難しくなってしまう。
  • 財を遺すは下、仕事を遺すは中、人を遺すは上とする」その意味は、財産を遺すのも業績を遺すのも大切ではあるが、人を遺すのはそれ以上に困難であり、人を遺すことができれば、財産も業績もおのずとついてくる、ということ。
    果たして、あなたの歩いたあとに、大きく羽ばたく後輩が排出するだろうか。どれだけ才能が花開くだろうか---あなたの勝ち負けは、ある意味、そこで決まるといっていいのではないか。
  • 何事も、小事が積み重なって大事にいたる。イチローや落合のような天才であっても、そのように考えている。ましてや天才でない人間は、よりいっそう小事を大切にしなければ大きな仕事などできるはずがない。凡人が人より抜きん出ていくためには、小事を大切にし、それを積み重ね、一歩一歩大事に近づいていくしかないのだ。
  • みずからが問題意識を持ち、何がいけなかったのかを考え、改善するための課題を掲げ、能動的に取り組まなければ、失敗を次に活かすことは不可能といってもいい。その結果、また失敗してもかわなない。考え、苦労したぶんだけ、人は絶対に成長しているのだから
  • 人間の成長には感動、すなわち感じて動くことが欠かせないが、メモはまさしく感じたことを書き留めたものだ。そして、それを見直すことは、感じたことを再確認する作業であると同時に、もう一度感じることになるわけだ。いってみれば、メモが連想を呼び、想像力を刺激するのである。
    そして何より、実際に手を動かす事で、脳に刻み込まれる情報量とその精度、確度が、たんに眼と耳だけで取り込む時よりはるかに増え、高くなる。
  • 正しい努力をしている者と間違った努力をしている者とでは、二年、三年も経てば大きな差が開いているはずだ。それではどうすれば間違った努力をしないで済むのか。「おのれを知ること」もっとも大切なのは、これである。おのれを知ることで、われわれは自分に足りないもの、必要なことが見えてくる。自分を活かす場所、活かすすべがわかる。
  • いい素材が不足しているのなら、環境が悪いというのなら、それを嘆く前に自分でなんとかすればいい。そのくらいの気構えがなければ、プロフェッショナルとはいえない。酷な言い方をすれば、”負け犬”でしかないのである。

ご冥福をお祈りいたします。