なぜ新聞やテレビの報道内容が政府寄りであるのか、記事が似たような内容になるのか?
- 作者: 上杉隆
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2012/02/15
- メディア: 新書
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- 日本の記者は、記事を自分で書かない。現場で話を聞きながら、それをメモに起こす「速記起こし屋」である。記者が起こしたメモは、記者クラブの中で、他社の記者と共有される。各社の記事がほぼ同じになる構造はこの談合(メモの共有)にある
- 実際に記事を書くのは、記者を部下に持つデスクである。デスクは自身が現場に行かないので、記事には現場感がなくなる
- 記者の書いたメモは、デスクの上司である政治部長、編集局長、編集委員、論説委員、解説委員にまで上げられていく。中にはそのメモを政府側に売る新聞社がある。その謝礼として、官房機密費から、ひと月に数百万円程度拠出されていたという証言もある
- 内閣官房調査室や公安調査庁などの政府の情報収集機構は、何十人ものスタッフをかかえ、様々なメディアの記者から情報を集めており、記者のメモは、官邸中枢に即日のうちに届く
- 官邸中枢は集めたメモの主な使い道は2つ。1つめは「政治家対策」。つまり政府にとって都合の悪い発言をしている政治家への対応へ使われる。例えば官僚に「レク」をさせて態度を翻すように洗脳する。ひどい場合には、スキャンダルを仕掛けて、その政治家をつぶす事も可能である。
- 2つめは「メディア対策」。これを見ればある社の記者がどのような方針で取材をしているか、手に取るように把握できる。政府の都合が悪い報道をする場合には、そのメディアに圧力をかける。さらに入手した情報の一部を、評論家やコメンテータに逆流させ、TV番組でコメントさせる。こうやって政府は世論を操作していく
- まとめると全国の政治記者はみな、官邸の情報収集係をやっていることになる。「ジャーナリズムは反権力」と謳う新聞も、結果的には、権力に「奉仕」している。
- ただしこの記者クラブ制度は、メディアと権力双方にとってメリットのある仕組みになっている。政府はメディアを使って世論操作ができ。メディアは価格を固定することで競争を抑え、新規参入をむつかしくする再販制度を維持できる(だから堀江貴文氏のようなメディアへの新規参入者に対して、徹底的に排除しようとする)
上のような「官報複合体」の癒着構造を図で表すと以下のようになる(赤矢印がメモの流れ)
本書ではそれらを裏付ける話がいろいろ出てくる。メディアに疑問を持つ人は、是非一読を!