- 作者: 藤沢数希
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2012/02/17
- メディア: 新書
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そのデータの内訳は以下。
◎原子力の犠牲者(0.03人/TWh):チェルノブイリの犠牲者を4000人とし、50年で割って=80人/年。発電量2700TWh。よって、80/2700=0.03人/TWh
◎火力発電の犠牲者(21人/TWh):100万人が大気汚染が原因で死亡しているが、そのうち火力発電による死者数は3割の30万人。発電量1万4000TWh。よって、300000/14000=21人/TWh
いかにも米国金融にどっぶり浸かった新自由主義論者の書きそうな内容である。藤澤氏は金融系では人気のあるブロガーらしいが、その知名度だけで騙されていはいけない。素人視点ながら、本書の内容への疑問点を幾つかあげてみたい。
●犠牲者(死者)以外にも比較対象すべきことはある
- 比較すべきは「電力量と人命」だけでよいのか。藤澤氏は、勝間和代氏の事故発生当初の主張と同じく、「人が死ぬ」リスクだけを考え、放射線や放射性物質による『病気や障害』などについての、考えられていない。
- 原発は、人間への物理的な影響(死、障害)以外にも、『精神的な被害』を生み出す(「事故への恐怖」、「環境汚染への懸念」、「健康への不安」、「仮定の崩壊」、「仕事の喪失」、「将来への絶望」、「生きる意欲の喪失」など)。
- 原発は、事故による放射性物質により、『人が住めなくなる地域や、除染もできないような国土』をつくってしまう。更には国境を越えた『海洋汚染』まで引き起こす。
●原発の犠牲者について
- 低レベルの放射線の影響についての人体への影響に対する考え方が確定しない中、それらを無視してチェルノブイリの犠牲者を4000人するのはおかしい。
- 死者数について、対象をチェルノブイリ事故だけを対象にするのはおかしい。表には出てこない、通常の運転に関わる作業員の死者もいるはずである(「知られざる原発被曝労働―ある青年の死を追って 藤田 祐幸 (著) 」など)
- 最悪の事故になった場合に、犠牲者がとてつもなく大きな数になる可能性がある(田坂広志氏も述べているように、今回の福島のように、最悪の事態が発生した場合に、首都圏全域の3千万人の避難の可能性もあったのだ)
●火力発電の犠牲者数は、日本には合致しない
- 藤澤氏のデータは全世界のものを用いているが、日本の発電所の大気汚染原因の除去技術は、世界と比べ物にならないほど高いので、このデータを日本に当てはめれば、死者数はこれほどにならないはずである。
以下、北陸電力のサイトから引用
http://www.rikuden.co.jp/hatsudensyo/taikiosen.html
その他にも、クライメートゲート事件でも明らかになった「温暖化CO2懐疑説」が出回っている中、それには触れずに、火力発電は地球温暖化の張本人であるとしている。
更に、核燃料廃棄物に関しては
ガラス固形体にする技術もまだ十分に確立していないし、それを深海に沈めた場合の水圧に耐えられるかという問題など、よくも、ま〜こんないい加減なことを言えたものである。
核燃料廃棄物は、その量が非常に少ないことから、過去に問題になった水銀や重油などの海洋汚染とは、また違う危険性なのです。ガラス固形体にして、頑丈な容器にいれ、海溝に沈めれば、やがてプレートといっしょに地球内部に巻き込まれていきます。国際的に厳しい規制のもとで、環境に十分に配慮しながら、ガラス固形体を沈める、というのはひとつのオプションとしてのこしていいのではないかと思います。
何千年後の話をしているのではなく、その間ずっと廃棄物を管理・維持する必要があるのです。その技術すら確立していないのに...
反原発団体が、よくこの高レベル放射性物質を理由に原子力を批判していますが、正直いって、僕には何が問題なのかさっぱりわかりません。反原発団体は、何世代にもわたり危険な放射性物質を埋めておくのは、危険だといいますが、彼らの想定を着ていると、何千年の間に一国の文明が一時的に滅び、その後にやってきた子孫が発掘して被爆して癌になったら大変だということらしいのです。
アマゾンの売れ行きを見る限り、そこそこの売れ行きらしい。
言論の自由はあるので、原発推進の主張をするのは勝手であるが、読み手が本書の内容を盲目的に信じることのないよう。