knjrの日記

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池上彰の政治の学校

池上彰の政治の学校 (朝日新書)

池上彰の政治の学校 (朝日新書)

いままで無難な事しか発言しなかった著者の池上さん、本書ではいろいろな面でズバズバと言っている。

  • 日本の政治が上手くいかない理由は、政治家が「票集め」に走り、国民が「幸せの青い鳥」を追い求めているから。本来は「国」のために働くはずの政治家が、「自分に票を入れてくれる人」のために働いている。政治家とは何をするひとなのかととことん突き詰めて考えると、「私たち国民が納めた税金の使い道を決める人」ということになる。そうした仕事ができる能力があり、誠実な人間を選ぶのが選挙である。
  • 55年体制以降の自民党社会党は、国内政策については共に「社会民主主義政党」であり、考え方の差は殆ど無かった。今の民主党自民党も政策で2党に分かれている訳ではない。日本の国会議員は、必ずしも自分の信条と照らし合わせて所属する政党を決めえ入るわけではなく、選挙で勝てそうな政党に腰かけ的に属している人が多い。
  • 政権交代した後の民主党はとてもお粗末であった。けれども政権交代した結果、ひどいことになった」と国民が感じているのであれば、また選挙を通じて政権交代をさせればいい。これを何度か繰り返す事で、国の政治が、つまりは国そのものが成熟していく。これこそがまさに民主主義の本道である。
  • 東京地検特捜部は自分たちで犯罪を探してくることができる。そうすると「大物を捕まえたい」という意識になる。特に大きな仕事は政治家を逮捕する事。つまり小沢一郎強制起訴は、「事件があって、それを捜査する」のではなく、「検察が手柄を挙げたい。事件になりそうなものを探す」という点が問題。これには「国策操作」という疑いもある。
  • 各省の○○審議会が、官僚主導を支える重要な仕組みの一つ。あらゆる政策を進めるにあたって、広く専門家から意見を集めて、参考にしようというのが目的である。この審議会メンバーは役所が独自の基準で「選ぶ」。つまりこれは「審議会」が名ばかりで、委員を選ぶ段階で、その審議会の結論は決まっている事を意味する。官僚は自分達が選挙で選ばれた存在ではないため、独自に進めているのではなく「有権者の意見をきちんと聞きました」という形をとりたいために、この審議会を利用している
  • インターネットにより誰でも自由に意見を発出できるし、官庁の公式発表もHPでアップされるようになった。いままでの記者は情報源を独占していたため大きな顔をしていれたが、もうその特権はなくなった。これからの記者が求められるのは、いままでのように情報を右から左へ流すのではなく、「政治家の話していることの国民への意味」や「役所の発表した情報によってどのような世の中になるのか」といった分析である。
  • 橋下氏の人気は、決して、政策の内容に支えられているものではない。これは政治家としては異常な状態。これは小泉氏のときと同じ現象である。小泉氏の支持者は、小泉氏の目指す「小さな政府」の世の中にしたい訳ではなく、ただ今の世の中に不満をもっており、現状の政府を攻撃して、力を奪うべきと考えただけ。有権者がどのような考えをして、どのような政治家を支持するのは自由だが、恐ろしいのは「ともかく今と違った状況を作ってくれ」という要求を繰り返しても、世の中は改善されない
  • 橋下氏は弁護士としては法廷で弁論するよりも民事訴訟をうまく和解に持っていき、手数料を受け取る仕事をしていた。和解に持っていく交渉術というのは、最初にふっかけておいて、落としどころを自分の都合の良いところにもっていくものであるので、橋下氏はその技術に長けているので、それを政治の場に応用している