knjrの日記

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国家は「有罪(えんざい)」をこうして創る

NHKキャスターの森本健成氏が痴漢容疑で逮捕された。本人は全面否定、報道されている説明にも不自然なところが多い。その点については、ネット上でいろいろと突っ込みが始まっているので今回はふれない。


本書は2004,2006年と痴漢冤罪事件で逮捕され、2009年に有罪判決を受けて収監生活をさせられた経済学者の植草氏の冤罪が作られる仕組み、背景を暴いたもの。なぜ犯罪者に仕立てられたのか。一般的には植草氏がりそな銀行の巨大インサイダー事件の事実を暴こうとして権力中枢に反抗したためと言われている。


「検察や国家がまさかそんなことをするわけが無い、仮に起訴されても、裁判所が公平な判決を出すはず」と思っている国民は多かった。だがそんな前提は、厚労省村木厚子さんの事件、先日のPC遠隔操作事件を始めとする、数々の強引な捜査や冤罪事件、内部告発により覆された。その目線で本書を読んでみると、警察と検察、更には裁判所を含めた国家権力のいい加減さが見えてくる。

国家は「有罪(えんざい)」をこうして創る

国家は「有罪(えんざい)」をこうして創る

詳細は本書を読んでほしいが、植草氏を国家権力が葬りたいと思った理由は以下ではないかと思っている

  • 大蔵省での研究所研究官生活がある(財務省内部、官僚の仕組みを知っている)
  • 国民目線を持っている
  • 難しい事象を分かり易く説明する能力がある
  • しつこい、諦めない


陸山会事件、植草氏の事件、村木さん事件といい、いい加減な証拠をでっち上げて、時の権力に反抗するものは抹殺する。恐ろしい世の中である。


この手の内容では、珍しく大手メディアである産経も書評を書いているので、こちらも参考に。
http://sankei.jp.msn.com/life/news/120728/bks12072807550000-n1.htm


「国家は『有罪』をこうして創る」 ■記録と対談で明かす冤罪


 「私は毎日、独房で袋貼りをしていました」−。60日間にわたる収監生活を淡々と振り返る植草一秀氏。周知のとおり、植草氏は電車内の痴漢事件(2006年)容疑で起訴され、09年に有罪が確定しました。


 日本の刑事裁判の有罪率は99・8%に上ります。国民は公正中立な裁判を疑いません。が、「足利事件」などの冤罪(えんざい)や昨今の検察不祥事が明らかになるにつれ、司法に不信の目を向けるようになったことも事実です。


 もしかしたら検察は、裁判で「有罪」が導かれるように事件を「創作」しているのではないか−。証拠の改竄(かいざん)(障害者郵便制度悪用事件)や虚偽報告書作成(陸山会事件)。「創られた有罪」の事例が頻出しています。


 本書は大きく2本の柱で構成されています。1つは高橋博彦氏による「植草事件」(2006年、京急車内の事件)の公判傍聴記録、もう1つが副島隆彦植草一秀両氏による対論です。


 克明に記録された傍聴記は、法廷での生々しいやり取りと著者による分析が相俟(あいま)って、「植草事件」の本質を掘り下げてゆきます。事件の目撃証言や警察の初動捜査に対して数々の疑問点を指摘し、読む者を捉えて離しません。


 一方、3年ぶりに実現した「副島・植草対論」。注目すべきは、橋下徹大阪市長を中心とする政局への言及です。「橋下首相待望論」が浮上するなか、副島・植草両氏は、そうした日本の空気に警鐘を鳴らします。それはなぜなのか? ぜひ本書をご一読ください。(副島隆彦植草一秀高橋博彦著/祥伝社・1470円)


 祥伝社書籍出版部 岡部康彦