knjrの日記

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日本破滅論

安部自民党総裁の金融緩和と公共投資増額によるデフレ脱却政策の表明でマーケットが反応し円安株高に振れている。自民党の主要政策(原発推進、消費税増税、TPP参加)には全く賛成しないが、このデフレ脱却政策は評価する。このデフレ脱却政策に反対の声もあるようだが、この程度の金融緩和でハイパーインフレにはならないし、公共投資はデフレ期に経済規模を拡大するために必要である(家計と政府財政を混同しないよう、政府には徴税権と通貨発行権があります)。


では近年なぜ公共投資が抑えられてきたのか。その理由の一部が本書の藤井先生と中野先生の対談中に出てきた。①財務省増税論の根拠としている税収弾性値、②日本政府のマクロ経済シミュレーションモデル

日本破滅論 (文春新書)

日本破滅論 (文春新書)

①税収弾性値

  • 税収弾性値とは、名目GDPが1%増えた時に税収が何%伸びるかを表す数値。これは消費税議論において最も重要な数値である。
  • もし税収弾性値が十分に高ければ、高齢化社会に対応するために経済成長をはたせばよいという論理が正当化される。逆に低ければ、いくら経済成長しても税収は伸びないため、社会保障費の自然増加分に対応できないという結論になる。
  • 税収弾性値の過去15年間の毎年の単純平均値は4。つまりGDPが1%増えると税収が平均4%伸びる。逆に1%減ると4%落ちる。
  • しかしながら2008年に経済産業研究所が出したペーパーには1.1くらいと書かれており、財務省や政府が最近はこれを使っている。(たぶんこの資料
  • 1.1という値と単純平均値の4と差ついての説明はあるが、統計的知識がある人が見れば全く説明になっていないことがわかる
  • 財務省はこの1.1という値を使うことで、「GDPを拡大しても税収が増えない、だから増税しかない」という形で増税論をまとめている

②日本政府のマクロ経済シミュレーションモデル

  • 以前は日本政府は経済企画庁がマクロ経済シミュレーションモデルを使って、国土計画をつくったり財政政策や税制を決めたりと、国の重要な経済政策を行う際に活用をしていた。
  • 2001年の行政改革経済企画庁が廃止となり内閣府になった”どさくさ”に紛れて、IMFが使っているモデルをベースに新たなシミュレーションモデルをつくった。
  • そもそもIMFは貧しい農業国を中心とする、インフレに悩みがちの途上国を対象に融資を行い、借金を迫る組織であるため、IMFのつくるモデルは、財政出動をさせない、増税させたいというモデルになる
  • 通常、公共投資に支出すると乗数効果が出るが、内閣府の新モデルで計算すると1兆円を出し続けてもGDPはほとんど伸びない。つまり公共投資はやってもムダという結論が出るようになっている。
  • 政府はこのモデルと使い緊縮財政路線と突き進み、公共事業関連費を過去15年で半分以下に削り、さらに今は増税まで果たそうとしている。


本書はこの2点以外にも、藤井先生と中野先生の密度の濃い対談の中で政府や官僚のウソを暴いている。また藤井先生は以下の対談の中でも、本書の内容について吼えていますので、興味のある方は是非!

それにしても藤井先生、面白い!