- 作者: 藤井聡
- 出版社/メーカー: 産経新聞出版
- 発売日: 2012/11/08
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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- 米国には1973年の第一次石油危機の世界不況を克服するために、日本とドイツが国内の需要(消費や投資)を拡大することで牽引車となるべきという「日本機関車論」という考えがあった。不況下で機関車になるためには、政府による財政出動、公共投資が必要となる。ドイツはこれを拒否したが、日本は当時の福田首相が受け入れ、77年、78年には5%台の成長率を記録した。
- 米国は、日本の経済成長により、米国から日本への輸出を拡大させ、それらを通して米国の対日貿易赤字を縮小させようと考えていた。しかしながら米国の対日貿易赤字は一向に改善しなかった。そんな中で始まったのが1989年の日米構造協議の中で、当時の海部内閣は、430兆円の公共投資を閣議了承した。
- 日米構造協議では公共投資の確約だけでなく、日本が溜め込んだ莫大な金融資産を、米国の財布として活用しようとする「日本財布論」が台頭してきた。具体的には日本の金融市場を自由化による米国系の金融機関への預金する、日銀や日本の金融機関が米国債を購入する、日本の金融機関が米国企業や投資家に直接貸し出すことなどにより、日本人がコツコツ貯めたお金を、米国の政府や投資家や企業が、ありたおあらゆる方法で「巻き上げる」のである。この状況は、日本と共に栄えようとするパートナーシップの感覚や協力意識などは無く、搾取意識といわざるを得ない(外国から搾取するとうことは、厳しい国際社会では至って常識的な発送だと認識すべき。搾取され続ける側が、愚かに過ぎるのである)
- クリントン民主政権の誕生した1993年からは、財布論を支持するウォール街の力が強くなり、機関車論の対日圧力は姿を消した。財布論では、日本の公共投資や設備投資を延ばしていけない。できるだけ経常収支の余剰を残して貯蓄をしそれを米国債など、いろいろな形で米国に吸い上げていくのである(実はこれは、英国がインドから搾取し続けた時と全く同じ構造である)。
- 財布論では日本がデフレであり続けことが求められる。その理由は3つ。①内需が縮小するデフレ下では、外需の依存度を高めるので、日本企業は輸出を増やさざるを得なくなる。これが日本を財布にしようと考える米国にとって都合のよい「貿易黒字の拡大」をもたらす。②デフレでは人々は将来の不安感と貨幣価値の上昇を見込むため、消費を減らし貯金を増やす。その結果、米国が利用できる「金融資産」が膨らんでいく③膨らんだ金融資産はデフレ下では行き場を失い、日本の銀行は自発的に米国債や海外への貸付をするようになる。
- 米国はIMFや小泉・竹中政権により、「内閣府の羅針盤」である「内閣府経済財政モデル」を操作して「緊縮財政」を誘導し、日本のデフレを維持させ、日本を財布として使い続けるように仕組んだ。詳細は「日本破滅論」に。
- 日本を駄目にしたのは米国、財務省、新自由主義の経済学者。。。。。ではなく、きちんとした情報を得ようとする努力をしない。それにもかかわらず、立派に文句だけは言う。よくわからないクセに、メディアの情報を真に受け、メディアで叩かれているあらゆる勢力を、メディアと一緒になって叩く。そんなメディアの論調にそのまま便乗して、よく分からないクセに、積極的に選挙にまでわざわざ出かけ、よく分からない政党のよく分からない候補者に投票する。さらには、心ある日本人にはもともとダメなのが分かり切っていた政党をフザケ半分の選挙で選んでおいて、いざ政権を持たせて案の定、日本をダメにしておいても、一切、反省をする素振りさせ見せずに、その政権を叩き続ける。しかも、それまでの失敗の経験を全て忘れ去り、小泉内閣の郵政選挙や民主党政権交代選挙の単なる焼き直しに過ぎない「維新選挙」に、邁進しようとしている。。。。。つまり、日本をダメにしてたのは、他ならぬ、今、まさに「維新」で踊っている戦後日本のダメ人間達である。
日本財布論については、本書で下村治氏の『日本は悪くない、悪いのはアメリカだ』の引用として、以下のように分かり易く述べられている。
「アメリカに貸しているカネは日本のものだと、あなたは本気で思っているのですが(略)もし日本が自分で使うから貸しているカネを返してくれと言っても、アメリカは帰すことは不可能だ。もし返せばその瞬間から経済が崩壊するからだ」
いわば、「ドラえもん」のキャラクターで比喩的に表現するなら、”ジャイアン”が”スネ夫”に「カネ貸せよ」と言って巻き上げたカネで、さんざん浪費し、カネがなくなったら「おい、カネがないから、もっと貸せよ」と威嚇してくるような状況に、日米関係はあると言ってもいいだろう。
ジャイアンはスネ夫を、ちょっと脅せばいくらでもカネを出す「魔法の財布」だと見なしている。一方でジャイアンが怖いスネ夫は渋々カネを貸し続ける。スネ夫は怖くて、返してくれと口に出せない。でも、何かが困ったことがあって、どうしてもカネが必要になって、意を決して「ジャイアン、前に貸したオカネ、返してくれないかなぁ?ちょっとだけでもいいんだけど.....」と控えめに申し出たとしても、ジャイアンは返せるはずもない。借りた金は全部、使い切ってしまって、何の蓄えもジャイアンにはないからだ。そして、ジャイアンは、自らの圧倒的な主従関係を盾に、のらりくらりと返金を先延ばしし続けるのである。
しかし−−−日本国民は、何ともお目出度いことに、そんな構造が存在しているなんてことはつゆ知らず、「改革」なぞという耳あたりの良い言葉に「踊らされる」ようにして、小泉首相の改革を、内閣支持率8割以上という異常な高水準で「熱狂的」に支持し続けたのである。その結果、日本は自ら進んで、アメリカの国益に適う「改革」を断行し続け、ますます「使い勝手の良い財布」になっていったのだ。自分達がせっせと貯め続けたカネが、アメリカに巻き上げられ、二度と戻ってこなくなることを、何も知らないままに、である。なんという「踊るダメ人間」ぶりであろう−−−。