吉本先生の12月に出版された新書。よくあるような巷の経済学者の信条や思い込みによる主張ではなく、本書ではデータを一つ一つ解析して導いた結論を教えてくれる。
今回は本書の中から、米国や日本政府の借金が大きな問題にならない理由について。
- 作者: 吉本佳生
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2012/11/17
- メディア: 新書
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- 米国は世界でダントツの対外純資産残高のマイナスを誇る世界一の借金大国である。ところが米国の所得収支は2011年で約17兆円と大幅な黒字であり、その額は日本の約14兆円を上回る。米国の所得収支が黒字である理由は、海外へ効率良く投資するなどした結果の直接投資額が大きいから。そのため米国政府が海外に支払う国債の金利を差し引いても、巨額の所得収支黒字になる構造になっている。それは2007年以降は強化されている。米国という国全体(経済全体)が、ひとつの超巨大投資ファンドになっている。
- 欧州危機の問題は各国政府の借金ではなく、対外的な借金である。事実、フランス政府は巨額の借金残高を抱えているが、所得収支が黒字であるため問題にならず、むしろ支援に回ることを期待されている
- 日本政府の負債残高の対GDP比はギリシャより高いが、国全体の対外的な貸借を見れば、日本は世界一の対外純資産残高を誇る。日本が対外純資産高がマイナスであるギリシャと並べて論じられるような国ではない。