knjrの日記

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バブルの死角 日本人が損するカラクリ

  • 現在の日本の経済システムには国民の大多数を占める中間層を没落させるしまうような制度やルールがあちこちにインストールされてしまっている。その制度やルールを通じて、中間層が失った富が大企業や株主、海外などの強者の手元に流れてしまっている。つまるところ、消費税、法人税などの税制、会計制度、円高是正のためとされる政府による為替介入、日本を飲み込むアメリカの新帝国循環、そのいずれも結局のところは国民の負担を代償にした強者のための優遇措置にほかならない。
  • こうした強者によりつくられた、強者のためのルールによって、雇用者の所得は奪われ、雇用そのものが縮小してしまった。そのことで強者と弱者の二極化が進み、経済活動が停滞してしまったのが、これまでの日本である。
  • 強者によって仕掛けられたカラクリはじつに巧妙で、弱者にはその実体がなかなか目につかないようになっている。


●カラクリ1:消費税

  • 経団連が消費税を歓迎するのは「輸出還元金」が得られるため。2012年度には総額2兆5000億円もの金額が輸出企業に還元されている。その約半分にあたる1兆2000億円が日本の輸出上位20社に還元されていると試算されている。現在の消費税による政府の収入は10兆円であるので、本来は12.5兆円である全消費税の歳入の5分の1が輸出企業に還付されている
  • 1989年に消費税が導入され、税率が3%から5%に引き上げられた1997年には消費税による税収は6.1兆円から9.3兆円に増加したが、それ以降は10兆円で推移している。消費税導入・引き上げで財政が再建されておらず、むしろ法人税や直接税が引き下げられ、財政は悪化の一途とたどっている。これらの経緯を鑑みれば、消費税の引き上げが国の歳入増につながる可能性はきわめて低く、歳入が減る中で、輸出企業への感元気の額がひたすら増えていくという不思議な事態となる。本来国民が再分配によって受け取るはずの富であるのにもかかわらず、企業が受け取る還付金の額だけが増える。
  • 大企業は消費税を価格に転嫁しやすいが、中小企業の多くは大企業に値切られ、過酷な価格競争に巻き込まれ、消費税を自腹できる形で負担している場合が多い。
  • 輸出還付金の機嫌は1954年のフランス。GATTにより輸出企業への補助金が違反になるため、戦後復興のためにルノーなどの輸出企業への補助金を継続するため、GATTに「自国の企業に法人税減税のような直接税での調整は認めないが、国内で段階的に徴収された間接税の調整ならば認められる」との文言を滑り込ませた。

  ※「税が悪魔になるとき」でも説明:http://d.hatena.ne.jp/kenjiro-t/20130115


●カラクリ2:時価会計導入で消えた賃金

  • 2000年をから2006年への景気拡大期に、大企業の株主への配当金額は約3.5倍になっている一方、人件費総額は微減している。大企業を中心に、株主への利益還元に重きを置く事が可能になった背景には、時価会計に代表される会計ビックバンの影響がある。

  • 会計ビックバンにより2001年以降、日本の上場企業は時価会計での財務諸表を発表しなくてはならなくなった。バブル崩壊以降の資産価値が著しく低下し続ける中での時価会計を採用した結果、企業や金融機関は評価損をこれ以上膨らませないために、株を売り続け、持ち合いも解消がすすむことになった。その結果、2003年4月には日経平均が7600円の最安値を記録し、そこで日本の企業から叩き売られた株式を買い漁ったのが外国人投資家であった。
  • その結果、企業は、「企業は株主のもの」「経営者の義務は、株主への還元の最大化」「雇用は人的資源ではなくコストである」という米国型の思想を受け入れ、低成長のなかで短期的な利益を重視する経営が求められることになった

  • そもそも時価会計がグローバルスタンダードと触れ込みで導入されたが、国内基準として時価会計を導入したのは日本だけである。

   読み誤った時価会計の導入時期:http://www.rieti.go.jp/jp/papers/contribution/fujiwara/02.html
   間違いだらけの時価会計:http://kokuminrengo.net/old/2003/200305-econ-tnk.htm

  • 大企業が子会社が孫会社からの受取配当金は「益金不算入」という法人税の規定によって、ほぼ全額が課税対象外になる。ということは本業が赤字の企業でも他社の株を持つ事で多額の配当金を受け取ることができる企業は、税務上は赤字として法人税を払うことがなく、会計上では黒字として自社の株主に配当金を出す事ができる。大企業はこうした新型の「持ち合い」により、税制上の抜け道を巧妙に活用している。


●カラクリ3:失われた雇用と再分配

  • 2000年以降、労働分配率(企業が事業活動をした結果生み出しだ付加価値に対して、人件費が占める割合)は低下を続けており、特に大企業での低下が大きい。その背景には労働者派遣の自由化政策による人件費カットがある。

  • 日本でも貧困率は上昇していおり、特に「子供の貧困率」が上昇している。本来はたまたま貧困家庭に生まれた子供に対しての格差を是正するため、政府は再分配機能、すなわち国民からの税金や社会保障料を受け取り、年金や生活保護、児童手当などの社会保障給付として国民に返す機能が存在する。それにも関わらず、OECD加盟国の中で、日本だけが再分配後の子供の貧困率のほうが、再分配前の貧困率より高くなるという逆転現象を起こしている。高齢者には年金と医療サービスで手厚い社会保障制度であるが、子供に対しては逆に貧困を加速させることになり、再分配が上手く機能していない。

  
  「子供応援便り◆みんなで考えよう!「豊かな教育」2009年冬号Vol.8」
   http://www.kodomo-ouen.com/questionnaire/08.html

  • 日本経済が低迷している真の原因は、モノの値段が下がる以上に下落してしまった賃金。今後どれだけ景気が回復しようとも、雇用状況や賃金の改善がない限り、あるいは消費税が引き上げられ一般国民や中小規模の事業者の負担が増える限り、日本の一般国民は疲弊していくことになる
  • 企業は疲弊しているならともかく、今は巨額の配当員や内部留保の存在は隠すことができない。大企業同士の持ち合いで多額の配当金を支払う前に、雇用の拡大や賃金へ回すことはできないのか。そうした企業への要請こそ、政府の優先課題として、今すぐ着手すべき。安定した人間らしい生き方、働き方を「中間層」が取り戻す方向に進む事こそが、日本社会再生へとつながるはず。


●カラクリ4:為替介入で流出した国富

  • 2001年から2011年までの11年間で、日本は58.6兆円ものドル買い(為替介入)を実施している。その殆どは米国債であるので、毎年平均5兆円を超える米国債を購入している。これは消費税1年間の税収の半分以上にあたる。本来こうした海外投資による収益が、日本国民に広く還元されるのだれば問題はないのだが、これまでの円高の流れにより、米国債の利回りよりも円高による原資の大幅な毀損のほうが大きいという状態が続き、また一回投資された資金が戻ってくることも無い
  • 借金する側とされる側であれば、いつの時代でも世界中どこでもお金を貸す立場のほうが強いはずだが、日米関係においては、資金を貸す側の日本が借りる側の米国の追加に合わせるという、非常に奇異な、いわば逆転現象が発生してきた。