knjrの日記

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「子育て」という政治 少子化なのになぜ待機児童が生まれるのか?

  • 待機児童問題の大きなターニングポイントは、保育所の民営化を大きく進めた小泉政権時代保育所運営費が国から市町村への財源権限委譲という形にされたが、実際には国から公立保育所整備に関するお金が来なくなったために市町村の予算は圧迫され、新たな公立保育所を作るのが難しい状況になった(①元々国庫負担制度であった公立保育所の運営費が、一般財源化され自治体が予算配分を決めることになり、考え方私大で公立保育所へのお金を減らして他の予算に振り分ける事になった②延長保育など、保育所で行う「特別事業」にかかるお金が補助金から交付金化、2006年度から保育所の建設や施設改修などに使われる「施設整備費」が交付金の対象外になった。)
  • 認可保育所が増えない理由の一つが財源。認可保育所は主に税金で運営されている。私立の場合は、1/2が国、都道府県と市町村が1/4づつ負担している。公立の場合は2004年から運営費が一般財源化され自治体が独自に分配されている。いずれの場合も保育所をつくれば作るほど、自治体の負担は大きくなる。120人定員規模の私立保育所を1園増設するのに約1億5000万円以上かかり、作った後のランニングコストも1億円ほど必要になる
  • 年度途中で入所が困難になっている理由は①給与問題と②保育そのもの問題。①保育所運営費の中で最も大きな割合を占めるのが人件費で、私立の場合約70%が人件費。4/1の時点で満員にしておかないと、自治体から満額に近い運営費を得る事ができないため。②4月の時点で余裕を持たせておくとなると、子供の人数によってできる保育がかわってくる、徐々に増えてくると保育にしくいという面がある
  • 待機児童の殆どは0〜2歳、最近特に増えているのは、育児休業明けの1歳の待機児童。静岡市には、待機児童だけを入所させる「待機児童園」を設置している。認可外であるが、保育はすべて静岡市の公立保育所の保育士によって行われており、面積基準や職員配置、保育料も認可保育園と同じ基準。入所先が決まれば、必ずそちらに転園しなければならない決まりで運営している。また川崎市横浜市では、最も多い1歳の待機児童を受け入れやすくするため、あえて0歳児の枠のない保育所、通称「ゼロ無し園」を新設している。
  • 町田市では将来の少子化を見据えて「20年限定認可保育所」を設置。市が20年間、土地には3000万円の補助金、建物には月額60万円の家賃補助をする制度で法人を募り、2010年に6箇所で490名分、2011年度までに1021名分の定員増を実現
  • そもそも「保活」という言葉が存在すること自体がおかしい。保育所児童福祉法第39条に基づいて設置、運営される児童福祉施設であり、同じ児童福祉法第24条には「自治体の保育の実施義務」が定められている。つまり市町村に住んでいる人が、子供を保育所に入れたいと考えて市町村に申請した場合は、市町村はその子供を保育所で保育する責任がある。ただし児童福祉法第24条の第1項には但し書きがあり、「保育に対する、需要の増大、児童の数の減少等やむを得ない事由があるときは、家庭的保育事業による保育を行うことその他の適切な保護をしなければならない」とされている。つまり、待機児童が多くて、保育所に入所できない子供がいる場合にも、保育ママなど、その他の「適切な保護」をする責任が、市町村にはある。つまり「保活」を行わなければならないような状態になっているのは、市町村が児童福祉法をきちんと守っていないからである。
  • 子供を保育園を希望するのに入れない場合は「異議申し立て」をすることもできる。2013年に杉並区の母親から始まり、渋谷区、大田区、目黒区、さいたま市などに普及していった。「異議申し立て」は難しいものではない、提出書類はA4判 1〜2枚に、申し立て人(保護者)の氏名、子供の名前と年齢、異議申し立てをする内容(保育所に入れない事)、子供が保育所に入れない事を知った日付、異議申し立ての趣旨として「入所不承諾を取り消す」ことを明記して、異議申し立てをした理由を記すだけ。保育園ふやし隊@杉並」のホームページに誰でもダウンロードできるようにされている。申し立てができる根拠は、上述の児童福祉法第24条の第1項の主語が「市町村は・・」となっているから。
  • 小学校に入れない子はいないのに、保育所に入れない子がいる理由は、小学校で学ぶ事は「義務教育」として、憲法で保障さており、その上で学校教育法など、教育に関する法律があり、子供達は権利として「教育」を受けられるように守られているから。だから自治体は、いくら大規模なマンションが一気に建っても「小学校の待機児童」を出す事は許されない。それに対し、未就学の子供達には、何らかの保育をうける「権利」がいっさいにない。憲法はもちろん、法律にも記載されていない。子供達は「保育を受ける権利」があり、親が子供のための権利を行使しようとしたら、自治体や国は必ず子供たちに保育を受けさせる義務がある、ということを法律に明記すれば、小学校同様に、待機児童はなくなるはず。