- 作者: 神永正博
- 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
- 発売日: 2009/04/15
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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他人が気づいていない問題を見つけ出し、自分で考えて結論を出すためには、人からの押し売りのデータを読まされるのではなく、自分でデータを読む必要がある。そのためには
1.正しい生データを入手する、データを図にしてみる
2.統計の基本を使ってデータを読む。平均と分散、大数の法則、相関、分布など
必要があるということを数式をほとんど使わず、分かり易い例を用いて説明してくれている。
本書中に、間違った統計データの読み方としてあげられている例から、幾つか拾い出すと
- 本来はワイブル分布(※)のはずであるのに、安易に正規分布が使われることが多いので注意が必要
- ランダムな点を結んだだけのチャートのように実際には周期性がなくても、人間は周期性があるように見てしまう(ユール=スルツキー効果)。株価チャートを見るときには注意
- 金融工学で使われるブラック・ショールズの評価式は、べき分布を正規分布と間違えていたことにより、巨大な投資銀行が破綻することになった
など、それぞれとても興味深い。
本書の最後に非常に良いことを言ってくれている
『おそらく、自分で考えることの最大の敵は、自分にはわかっているという過信です。いちばんむずかしいのは、正気を保つことなのです。正気をたもつために、データ分析ほど強力な薬はないでしょう』
とのこと。全くその通りであると思う。
※:物体の強度を統計的に記述するためにW.ワイブル(Waloddi Weibull)によって提案された確率分布。時間に対する劣化現象や寿命を統計的に記述するためにも利用される。(Wikipediaより)