- 作者: シドニーデッカー,芳賀繁
- 出版社/メーカー: 東京大学出版会
- 発売日: 2009/10/29
- メディア: 単行本
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著者の主張については、本書を読んでいると翻訳書ということもあり論点がぼやけてくる。一番分かり易くまとまっている末尾のあとがきから要約すると…
- 結局は”失敗から学ぶ事”と”失敗に関する責任説明を果たす事”の両方をどうやって満足させるか、という難題への解決は非常に困難
- 司法システムが介入する事により、原因解明が明らかになりにくくなっている。なぜなら司法の場では不利になる証言をしなくてよいという権利があるし、裁判の争点以外は論じられる事はないから
- 高度なシステムの中での事故は、様々な視点や説明があるため、どれか一つが「真実」という単純なものではない。そのため、複数の説明に対して、それぞれに一理があることを認め、多角的に進めていく事が安全性の向上には必要となる
- ヒューマンエラー全てが免責されるわけではない。許容されるエラーと許容されない(罰すべき)エラーの境界線をどう引くかという問題もある。どこに境界線を引くかというのは難しいので、誰が境界線を引くかということに議論をすべき。線を引くのは、司法ではなく専門家や外部有識者であるべきである
本書の話ではないが、たまたま年末に医療業界と工場をもつ製造業で働く友人にヒューマンエラーへの取り組みの話を聞いてみた。いずれの職場でも積極的に取り組んでいて、現場の人間の意識も変わっているし、実際にミスも減少しているとのこと。医療や製造業の現場では、エラーが直接人間の命に直結するので、取り組みもIT業界よりも先に進んでいるようだ。