- 作者: 田中秀臣
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2010/05/07
- メディア: 単行本
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「日銀の実質上の金融引き締め政策により、長期の経済停滞が引き起こされた。今後、日銀は通貨供給量を増やして2%以上のインフレ目標を目指すべき」と。
本書から幾つかポイントを
- 日銀は官民の日本の経済学者に強い影響力を持っている(日銀出身者が多い、日銀は学者に研究資金を与えている)
- 日銀はデフレに対して何もできないとうスタンスを崩さない(需要が不足しているときに、流動性を供給しても物価は上昇しない)
- 日銀の公の目的は「物価の安定」であるが、これは「バブルの防止=事実上のデフレは許容する」と世間の感覚からずれている
- 日銀は戦前の高橋是清で始まった国債の日銀引き受けがハイパーインフレを招いたという組織としてトラウマになっている。そのため、長期国債の引き受けを拒否している
- 日銀はつい最近まで政府の一機関であったため、お役所である。決められた仕事をやればそれで責任は果たしたという感覚で、結果に責任を感じることはない、目的を達成するために余計な仕事をすることなどごめんと思っている。
- 日銀は貨幣発行という特権は100%自分たちのものだと思っていて、たとえ政府であろうと、その特権を少しでも与える気は毛頭ない一方、その特権を使って日本経済を良くしようという気持ちは少しもない。
- 日銀の政策は委員会ではなく、企画局という1部門でクローズな中で実質上決められてきた。
- 日銀内部で自己批判ができない体質である(内部で左遷させられるらしい)
- FRBはリーマンショック後、2009年5月の時点で2.4倍、イングランド銀行も1.9倍の資産を余裕している(=貨幣を供給している)が、日本はわずか2%増である。
などなど。
かなりの部分、昨年読んだ日銀関連の書籍※と重なるが、本書はよくまとまっているとおもう。
マスコミでも日銀を批判を目にするケースは少ないが、景気がなぜ良くならないんだろうと思っている人は是非読んでみては。
※
日銀―円の王権
http://d.hatena.ne.jp/kenjiro-t/20091127
日本銀行は信用できるか
http://d.hatena.ne.jp/kenjiro-t/20090908
国債を刷れ!「国の借金は税金で返せ」のウソ
http://d.hatena.ne.jp/kenjiro-t/20090509
円の支配者 - 誰が日本経済を崩壊させたのか
http://d.hatena.ne.jp/kenjiro-t/20090127