knjrの日記

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税が悪魔になるとき

税が悪魔になるとき

税が悪魔になるとき

  • 消費税には税務署へ納税義務のある「納税義務者」の定めはあっても、実際に税金を負担する「担税者」の規定は存在しない。一般的には消費者が消費税を負担するように思われているが、消費税5%をすべて転嫁できているのは、年間売上高2億円超の企業では67%、500万円以下では29%と、中小・零細企業ほど、消費税分を自腹を切らされているのが実情である
  • 消費税は弱肉強食の税金。大企業は税金を価格に乗せて売る「前転」も、仕入れの際の下請けに泣かせて税金を乗せさせない「後転」の両方ができるため、二重の転嫁ができる。大企業にとっては消費税のような税金はあってもらったほうがありがたい。
  • 消費税はヨーロッパでは「付加価値税」と呼ばれており、1954年に最初にフランスが「間接税」と定義し、導入した。フランスが「直接税」ではなく「間接税」としたのには背景がある。1948年に締結されたガット協定により、それまで輸出企業に交付してた補助金を停止せざるを得なくなった。そこでフランス政府が何とか別の仕組みで輸出企業を応援できないかと考え編み出されたのが「付加価値税」を「間接税」として導入すること。直接税の場合は、納める税金を同じ相手にまた戻るのでガット協定違反となるが、間接税であれば違反とならない。つまり、輸出大企業に「補助金」を還元してやる仕組みを作るために、「付加価値税」の形だけをいじって「間接税」と定義づけた。日本もそのアイディアだけをそのまま拝借し「間接税」だと言っている。
  • 消費税は増税が国民にピンとこないのは、今のような不景気の状況では消費税が上がったからといってまともに物価が上がるはずがないと、生活者の本能みたいなもので思っている=身にしみて感じていないからではないか
  • 消費税には、輸出の際に税金をかけないだけでなく、その原価(仕入れ)などに含まれる消費税分を、国が戻してやるという「輸出還元金」制度がある。2010年では日本全体で2兆5000億円、還元トップのトヨタ自動車は年に1500〜2000億円ほど還元金を受け取っている※。消費税が10%になれば還元金も倍になる、輸出企業には非常にうまみのある制度
  • 消費税には仕入税額控除という仕組みがある。外注費は控除対象になるが、人件費(調節雇用している従業員の給与)は控除対象ではないため、人件費の多い企業は消費税の納税額が大きくなる。そのため経営者は経費を減らすため、正社員を減らし、その分を外注や派遣社員でまかなうことができる。大量な労働者を働かせる大企業にとっては派遣労働者の拡大は、人件費の削減だけでなく、消費税の節税の面でも大きな意味を持つ
  • 消費税と福祉目的化、福祉目的化するとう議論について。政府や財務省の見解としては、消費税は既に福祉目的化が図られている。しかしお金には印がないので、どれが消費税収分かがわからないし、実際に充てているのかもわからない。福祉目的化については、そもそも消費税を目的税化することはできない。その理由は、目的税というのは、税の徴収と使い方に関連があることが必要なため、あらゆる取引に課税する消費税と、それを福祉に使うことの関連性が説明できないから。


※全国商工新聞(2011年12月12日付)
http://www.zenshoren.or.jp/zeikin/shouhi/111212-01/111212.html


斎藤貴男氏「消費税のカラクリをあばく」(7回シリーズです)